667 名前:1/2 ◆MMEYTMikmI :2006/07/16(日) 00:59:58.28 ID:qwKXZiyfO
お題 音
タイトル 花火大会
「諸君、私はアベックが大嫌いだ」
俺がそう言い放ち、第7回毒男集会が始まる。少年時代から毎年、花火大会とクリスマスに開かれている崇高なる会だ。
「御手洗君の姿が見えませんが、どうしたのですか?」
メガネがいきなり禁句を……空気嫁。
「達彦は女子を誘って花火見に行ったぜ」
イケメンアニオタの白石が言った。
……そうなのだ、驚愕すべき事に、あいつは静香を今日の花火大会に誘ったのだ。おかげで俺は何十足もの草鞋が作れそうな量の藁で、藁人形を作る羽目になった。
「しかし、達彦も馬鹿な奴だ。三次は金がかかってしょうがないからやめろと前から教えてやってたのに」
「いや、白石君の考えもどうかと思いますよ……」
二人が色々言っているようだが、こんな話をしていても負け犬の遠吠えに過ぎない。かくなる上は……
「御手洗達彦をぶっつぶすお!裏切り者に血の粛清を!だお!」
668 名前:2/2 ◆MMEYTMikmI :2006/07/16(日) 01:01:08.49 ID:qwKXZiyfO
「そろそろ始まるかな?」
今、俺は静香さんとうちの近くの神社の花火大会に来ているんだぜ!誘う時には死ぬほど緊張したが、かき氷を買って石段に座って食べたりしたんだぜ!これから花火を見てその後はこ、こく……
「あっ!始まったよ!」
赤、黄、緑。様々な色の光が空を彩り、それらはとても美しく、自分が夢の中にいるような気がしてくる。
目を閉じる。人々のざわめき、夜空に弾ける花火の音、隣から伝わってくる確かな温かみ――
俺は今、幸せだ。
「なるほど!じゃあ明日は静香さんの前で御手洗さんの恥ずかし〜い話をするってことですね!」
「達彦め、笑っていられるのも今のうちだぞ……」
結局この集会は達彦の処置を考えるだけで終わってしまった。まあ仕方がない。あの貧乳フェチの裏切り者には十分な処罰を必要とした。
「それでは解散!」
会長である俺の一言で解散となった。二人が帰って、後には俺一人が残された。
花火の音が聞こえる。
たった一瞬だけ輝き、そして消えてゆく花火。
聞こえてくる淡い音は、花火の儚さを教えているように思えた。
花火がその役目を果たし、死んでゆく音を聞きながら、俺は役目を果たさずして死んでゆく子供達を見た。