【 雨宿り 】
ID:lPlk2jgW0




674 :一応、週末品評会用:2006/07/09(日) 22:39:44.49 ID:lPlk2jgW0
耳に入るのは安っぽいトタン屋根を叩く雨音。
8回の裏から急に降り出した雨が止むのには、まだかかりそうだ。
いつもなら騒がしいベンチも今は静かだった。
まあ、俺たち3年からすれば最後の大会だ。負ければそこで中学での野球活動は終了。
3年はモチロン、1・2年も雰囲気に飲まれ話そうとしない。
グローブを磨いたり、水分補給したりと皆黙々と最終回に意識を向けている。
9回表4−5の一点ビハインド。この回点を入れなければ試合終了、ついでに初戦敗退。
出来れば2点、なくて1点、どちらにしろ俺が塁に出ればかなり可能性が高くなる。
こんな状況のおかげで次の回先頭バッターの俺は、普段は感じない重圧感を受ける。
俺は高校で野球をする気はない。だから負ければ今日が最後、多分もうまともに野球することはないだろう。
別に長打じゃなくていい、ヒットでなくてもいい。
悔いを残さないようにしたい訳じゃない、負ければ悔いは残るものだと俺は思う。
ただ、少しでも長く野球をしていたい。
だから俺は塁に出る。

雨も小雨になり、試合が再会される。
相手が守備に着いている。
ヘルメットをかぶり、バットを握り締め、気合を入れる。
俺は野球をしにバッターボックスへ向う。
その刹那、
「あ、お前代打」
監督が交代を俺に告げた。



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