【 くもりがらすにFBA 】
ID:tgzZgYiG0




218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/08(土) 13:14:23.14 ID:tgzZgYiG0
初投稿してみる
品評会ってのも良く分からないが投下

テーマ:雨宿り
タイトル:くもりがらすにFBA

「ごめんなさい・・・私内藤君の事は嫌いじゃないけど、やっぱりその・・・」

駅から家に帰るまでの交差点。
内藤はふとさっきあった出来事を思い浮かべて目に涙を浮かべていた。
今日、この日のために鏡に向かって予行演習を重ねてきた。
毎日西川とは親しく話していた間柄だ、きっと大丈夫、きっと成功する。
そう思って望んだ、これからは楽しい日々が待っているに違いないと。

しかし、結果はこのざまだ。
肩を落として自分の家を見上げる。
空は灰色に包まれていてまるで自分の心を移しているかのようだ。
明日から学校でどんな顔をして会えばいいんだろう・・・。
足取りがさらに重たくなる。

家のドアを力なく開けて玄関に到着。
すると奥から妹がやってきた。
「おっ、どうしたクソ兄貴。犬のうんこでも踏んだのか?」
ニコニコ笑いながら他人の不幸をあざ笑うかの妹の言葉。
今は言い返す元気もない。

219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/08(土) 13:15:00.56 ID:tgzZgYiG0
俺は妹の言葉は無視してそのまま階段を上り2階にある自分の部屋に入る。
部屋に入るなり全身の力が抜けた。
カバンは床に落とし、そのままベッドにうつ伏せで倒れこむ。
ああ、悔しい、自分のふがいなさに悔しい。
力なくただ涙を流し、声にならない鳴き声を上げていた。
心の中は大豪雨

どれだけの時間をこうしていただろう。
1秒が1年に、10分が1秒に感じられる。
すると、ドアにノックの音が。
「兄貴入るよ?」
返事する元気もないので無視をする。
しかし、この醜態は妹だけには見られたくない。
寝た振りをしよう。

ドアが開き足音が近づく。
「冷蔵庫にアイスがあったんだ〜。良かったら一緒に食べない?」
返事をせずベッドに仰向けで寝たままの自分。
机の上にコトンとアイスのカップを置く音がした。
「このアイスおいしいんだよね〜。一緒に食べようよ〜」
ああ、どっかいってくれ。一人にさせてくれ。

221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/08(土) 13:15:17.66 ID:tgzZgYiG0
「そりゃ〜!ふらいんぐぼでぃあた〜〜っく」
いきなり妹が俺の上に飛び乗ってきた。
あ〜邪魔だ・・・そっとしておいてくれよ・・。
妹のやわらかい肌が俺の背中を刺激する。
このままじゃ何をされるか分からない。
俺は重い腰を上げた。

「あ〜〜わかったわかった一緒にアイス食べような」
絡んでくる妹をほどくようにして立ち上がり机に置かれたアイスのカップを手に取る。
安い100円くらいのチョコサンデーだ。

「もう最初からそうしていればいいのに〜」
スプーンですくって口の中に入れる、クリームの甘い味覚が脳を刺激しチョコのほろ苦い感覚も心地よい。

「今日ツンにたこ焼き一緒に食べようって言ったら、たこ焼きとはタコを丸ごと焼いたものですか?とか言ってくるのよ。もう本当に信じられない」
他愛もない冗談話を妹が投げかけてくる。
心なしかさっきまで曇り氷雨の降っていた俺の心に、明るい景色が蘇っていく気がした。

いままで鬱陶しいと思っていた妹の存在がこんなにも暖かく感じたのは初めてだ。

冷たく濡れた雨の日に、ここで暖かく休んでいても良いよね?



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