(注:以降の文章は、後日談として書かれたもので、本スレには投下されていません)
草原は、揚々と波打つ。
太陽は、燦々と輝く。
私は、キャンバスに向かって動かしていた手を休めて、振り向いた。
「ねえ、結局、ネイティブ・アメリカンの壁画、って何のこと?」
パシャ、とシャッタ音。
「あ、そのいかにもこっちを無視した感じ、いいね。
自分の頭の中で色々考えたけどやっぱりわかりませんでした、っていうか」
ぺらぺらと。本当にペラペラとした人格を装っている。
白井純。私と彼の関係は面倒くさいので省略。彼が持ってるのは、ポラロイドカメラだ。
レトロな写り具合がよい、とか、わけの分からないことを言ってる。
彼の視点や論点は焦点が定まってないようで、実は、自分のうちの一点から、世界を見通している。
私が、一つ一つの物体を見ている間に、彼は景色全体を見通す。写真を撮るように。
普通のカメラでは世界が細かく写りすぎて怖いのだろう。それは、裸のままの彼の人格と同じだ。
薄っぺらいポラロイド・カメラの写真のレトロな解像度は、薄っぺらくて分厚い彼の仮面と同じ。
そう、彼の仮面は分厚い。私の前で本心を見せたことなどあったろうか? いやない。
この間は、大泣きしてしまった。もちろん、私が。
「何時か……泣かす」
「ごめん。そんなに怒らないで」
何を勘違いしたのか、そう言って笑って、私の父、黒木芳野との会話を、忠実に彼は説明してみせた。
彼にとってはきっと私は、芸術家・黒木芳野の娘に過ぎないんだろうなぁ、と軽く父親に向けて嫉妬。
天国のお父さん、あなたの弟子は本当にレディに失礼な奴です。
「なるほど……」
私は、頷いた。納得した、理解したというよりは、これはチャンスだと思ったのだ。
「私も、何時か、見にいきたいな」
そう言って、彼の様子を伺う。
「ああ」
彼は爽やかに笑った。これは結構脈があるんじゃないかと思う。
「無理だよ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
俺が思うに、美術商ほど因果な商売は無いんじゃないか、と思う。
大好きな芸術品が、右から左へ流れていくのを、指をくわえてみているだけ。
飽きるまで見ていたい、という欲求は無いんだろうか。
タバコをくわえて、火をつけるべきか迷いながら、ふとそんなことを思った。
国産車のボンネットに腰掛けて、周囲をもう一度見渡す。
黒木邸の門は固く閉ざされていて、その周囲は田んぼのあぜ道だ。腰ほどの高さとは言え塀で囲われていて、
来客も侵入者も拒んでいる。門のそばに、一応木陰はあった。ただし、樹は一本だけ。今は、女性が一人で居る。
日本にこんな田舎が残っていることも十分奇跡的だ。だが、彼女の存在に比べれば、確率は十分高い。
桜小路沙耶。二十五歳。資産家・桜小路家の次女。何で俺みたいなうさんくさい人間と知り合いなのかは、面倒くさいので省略。栗色の長髪にはパーマが掛かっている。その細い腕には、小さな白い革のバックが引っかかっている。ドレスかと思うほど装飾を付け足したワンピースには、木の陰が掛かっている。そして彼女の嫌煙家ぶりは、カミガカっている。
結局タバコを諦めて、木陰に近づく。
「ああ、日傘も持ってくれば良かった。せっかく閃いたのに」
サヤは不機嫌だった。もっとも、それも演技だろうが。
「アポイントメントも取らずに、いきなり来てちゃしょうがないですよ」
「それもあなたの仕事ではなくて?」
「俺が黒木芳野の遺作についてのお話を聞いたのは、三時間前だったと思いますが」
「あなたが私のところへ話を持ってくるのが遅いのです」
「しかし、すぐに出発すると言い出したのは、あなたです」
「三時間もあれば十分です」
そう言って、しかし、それがすべて移動に費やされたことを覚えているため、彼女は会話を拒絶するように横を向いた。
ため息をついて、俺もそちらを見やる。サヤの沈黙は、あぜ道をこちらへ歩いてくる少年少女を見つけたからだった。
少年は、重そうなキャンバス立てとキャンバスの他に、何故かポラロイドカメラを持っていた。
一組の男女(お嬢様と運転手)と、一組の少年少女(何か険悪な雰囲気)。四人の沈黙を最初に破ったのは、
「あの、どちら様ですか?」
警戒を含んだ少女に対して、サヤは何処から出てくるのか不思議なほど魅力に溢れた微笑で返した。
「私、趣味で美術品の買い付けや販売――平たく言えば美術商みたいなことをしています、桜小路沙耶と申します。
本日は、黒木芳野先生の最後の作品がこちらにあると聞きましたので、突然で申し訳ありませんが、
こちらにおうかがいさせて頂きました」
ゆっくりとした口調だったが、相手が理解できたかどうかは疑わしい。
「あの、私……」
「暑いところ、こんな田舎まで御足労ありがとうございます」
少女を押しのけるようにして、少年がそう言った。
「しかし、黒木先生は、ご存知の通り晩年は筆を取られておりませんので――」
「あれは、アトリエですね?」
少年の言葉を遮って、サヤは黒い建造物を指差した。
「見学したいわ。是非」
そういって、微笑みかける。少年は表情を変えずに拒否の言葉を、
「構いませんよ。是非」
少女が早かった。
「ユキ?」
少年が、わずかに動揺する。
「どうぞ、上がってください」
それから先はとんとん拍子だった。今では、サヤとユキはアトリエに、俺と少年(結局あのままサヤがユキを丸め込んでしまったため、お互いの名前を知らない)は、物置に取り残された。四つのコップがテーブルの上に並べられている。中身は麦茶だった。少年は、じっとテーブルの上に置いた写真を見つめていた。さっき、少年が撮って来たものだろうか。
やることがないので、俺は、室内も観察する。物置というのが第一印象だったが、よくよく見れば、ここもアトリエのようだった。画材や、粘土の胸像といった美術準備室を思い出させる部分と、流しや食器やコーヒーメイカーといった家庭科室を思い出させるな部分とが渾然一体となっている。ここは教室なのかもしれない、と漠然と感じる。
少年が担いでいたキャンパス立て(イーゼルと言うんだったか)などは、そのまま置かれていた。キャンパスには、不思議な絵が描いてある。画面の中央が夏で、外側に向かうにつれて、秋、冬、春と変化し、四隅はまた夏になっている風景画。あまり価値があるとは思えない。
視線を感じて、そちらへ戻すと、少年と目が合った。
「白井純です」
相手が先手を取った。それが少年の名前なのだろう。
「納夢修一だ」
「ノーム……オサムさん?」
「収納のノウに、悪夢のム、オサムは、修学旅行のシュウに、金田一耕助のイチで、何故かオサムって読む」
「ああ、金田一少年のおじいさんですね」
そう言って、少しだけ純は笑って見せた。色々少年に対する質問が思い浮かんだ。黒木ユキと親しいようだが、何なんだろうか。とか、安易な質問ばかりだったので、口にするのはやめておいた。
「どうして、ここに来たんですか?」
「お嬢様の付き添いだ。ボディーガードというか……うーん、何だろうな」
「黒木芳野に最後の作品がある、何ていうのはどちらで?」
「おいおい、何だか質問攻めだな……。それは、サヤに聞いてくれ。俺は知らない」
「なら、それはユキが聞いています」
突飛な質問が思い浮かんだので(あくまで、俺のために言い訳をするが、普通だったらせいぜい高校生程度の人間にそんな事はしない。ただ、彼にただものではない気配を感じたからだ)、それを投げかけてみる。
「最後の作品を守るために、何処まで出来る?」
「何でも」
即答された。頭の回転が速い。事前に想定していたのなら、思慮深い。
「じゃあ、黒木芳野のただ一人の娘と最後の作品だったらどっちを?」
「作品です」
これも即答だった。
「それは何故?」
「何故でしょうね、僕にも分からない。もう作品を生み出す手が失われてしまったからかもしれません」
彼の一人称が僕であることを知った。
アトリエに続く扉が開いて、上機嫌のサヤが出てきた。
「ええ、そういうことなら、秘密にしておきましょう。黒木芳野は、最後の絵を描かなかった」
アトリエの中で、どんな話し合いがなされたのかは知らないが、予想外の決着ではあった。
彼女は、自分のバッグから、万年筆と名刺を二枚取り出した。
「はい、私の名刺。何か困ったことがあったら、電話してね」
砕けた口調で、ユキに名刺の一枚と万年筆を手渡す。
「二人の連絡先を知りたいわ。何か、書くものとかあるかしら」
「あー……」
ユキが視線をさ迷わせる。スケッチブックのような画材はあるが、メモ用紙のようなものは小型のものは無い。
「それ、ポラロイドの、いただける?」
サヤが少年の目の前の写真を指差す。
「いいですよ、ユキ」
声をかけて、写真をテーブルの上を滑らせる。
「うわー、さっきのだ……私、こんな変な顔してたっけ?」
恥ずかしがりながら、ユキが自分の名前と電話番号をポラロイド写真の余白に書き込む。
「じゃあ、次はあなた」
サヤが少年の前に、ユキから受け取った写真と万年筆、それから自分の名刺を置く。
彼は、少女の名前の下にさらさらと自分の名前と電話番号を、書き込む。
万年筆のキャップを閉めて、写真と一緒に、サヤに手渡す。それを受け取ると、サヤは嬉しそうに、微笑んだ。
「ありがとう」
田舎だった。それでも、信号はあるらしい。赤信号で止まった拍子に、助手席のサヤの表情を盗み見る。
見渡す限りに、車はおろか、人一人いなかったが。
「ずいぶん、嬉しそうですね」
「ええ」
「黒木芳野の最後の作品は、どうでした?」
「未完成でした」
「本当に?」
「ええ。多分、作っている最中に力尽きたのね。残念だわ」
そういって、微笑んだ。
「じゃあ何で、そんなに嬉しそうなんです?」
「すべての謎が解けたからです」
「分かるように説明してくれませんか?」
「ねえ、あの二人」
突然、彼女は話題を変えた。
「とてもお似合いだと思いませんか?」
「ええ、それは」
「それが答えです」
ゆっくりと、振り返る。
「いや、全然分かりませんよ」
「そうですね。あなたには情報が足らない。でも、話してもいいのかしら……」
「もったいぶらないで下さいよ」
「では、私はそれを話す代わりに、あなたは何をしてくれるのかしら?」
「そうですね……」
黒木芳野の作品は未完成だという。
「では、黒木芳野の作品に今後一切手を出さない、というのはどうでしょうか?」
「あなたにしては、破格の条件ですね。いいでしょう」
そういって、彼女は小さく深呼吸した。
「そもそも、私が黒木芳野の最後の作品があるに違いない、と思ったのは、彼の妻が、彼が作品を作っている最中に他界したからです。その時の作品は、結局発表されていない。その後、黒木芳野は作品を作ってませんから……きっと、妻をモデルにした作品が、未完の状態で残っているはずでした」
それを求めて、俺達は黒木芳野の娘を訪ねたのだった。
「それを買い取って、あなたに完成を依頼する、それが私の目的でした」
俺の副業は、贋作師である。世界中に、贋物を売りつけられて、損をしたふりをして脱税を行う金持ちが居る。もっとも、このお嬢様に知り合ってからは、未完成品の完成、にウェートがずれているような気もするが。
「しかし、私が見た黒木芳野の作品は、娘をモデルに写真と絵画を組み合わせたものでした」
「黒木は、絵画に転向したのに、どうしてわざわざ最後の作品を写真に?」
「ええ、それは私もそう思いました。最後の作品と分かっているならともかく、黒木芳野は、作品を制作している最中に死んでいます。
黒木芳野は、渡米した際に、ネイティブ・アメリカンの壁画を見ていました。それは壁画ではなく、写真だったのですが」
「……ネイティブ・アメリカンの壁画が写真?」
「ええ、ピンホールカメラの原理で撮影したもののはずです。それをきっかけに、黒木芳野は写真を撮らなくなります。この壁画を簡単のために、写真壁画と呼びましょうか。
ピンホールカメラは露光時間が長いですから、素早く動く物体は、像として影になるくらいで残りません。もちろん、感光板が反応する時間によって露光時間は異なりますが、写真壁画は、ゆっくりだったでしょう。最適化しても、数秒間かかりますから。
おそらく、(どんな文化でもそうですが)初めは偶然だったはずです。死んだリーダーを、洞窟に入れ、壁面を特殊な塗料か何かで塗ってから、粘土か何かで密閉した……エジプトのピラミッドと、似たような発想だと思います。そのうちのいくつかは、偶然安定な系を作り出し、現存しているわけです。写真壁画の場合では、密閉したつもりでも、わずかな隙間が開いていたかもしれない。外から、洞窟に粘土か何かで蓋をするわけですからね。そこから、光が差し込み、ピンホールカメラとして働いた。彼らのピンホールカメラの像は、遅い反応時間と、反転するカメラの性質のせいで、動くもののない、逆さまの世界であったと思われます。きっと、その後に、天災か偶然のなにかで蓋が外れて、それを目にした古代の人たちは、それに死後を強く連想したでしょうね……」
「それ、関係ある話ですか?」
「ええ。きっと、黒木芳野はそれに衝撃を受けた。多分、画家黒木芳野の原点はそこにあります。
さて、エジプトの王墓の話ですが、発掘の跡は、腐食が進んでしまったのです。密閉かそれに近い状態では、無菌室状態か、安定した生態系を維持していたのに、人の手が入ったことによって腐食が進み、文明の痕跡が失われてしまう……」
「写真壁画にも、それと同じことが起こったのですね?」
「そうです。他の壁画が洞窟の奥に描かれたものが多いのは、日光による破壊を免れたからです。写真壁画はピンホールカメラで撮影されたものですから、洞窟の比較的外界に近いところにあったはずです。発掘されたことによって、その壁画は外界の環境に晒されます。黒木芳野の若い時代は、そういった保管に関しての知識は余りありませんから……」
そういって、彼女は首を横にふった。まるで、自分も見てみたかったというように。
「黒木芳野は日本に帰国後、絵画の道を志しますが、断念します。そして、ある時を境に行方不明になります。おそらくは……、再びアメリカに戻って写真壁画を見に行った。そこで彼は、愕然とする。自分が衝撃を受けたものが消失してしまったことに。そして、次にフランスで発見されますが……」
「銀板写真の発祥の地だ」
「ピンホールカメラや、銀板写真といった撮影器具に関して、知りたくなったのか、それとも、芸術の中心だからか……それは私には分かりません。
その後、日本では、黒木芳野の作品が評価され、画家として認知されだします。彼は、生活のために、家族のために、絵を描くようになった。
けれど、その心はいつも、もう失われてしまったものへと向けられていたはずです」
それが芸術家の心なのだろうか。彼も、そういえばそんなようなことを言っていた。
「彼は結婚し、一女をもうけます。
家族が暮らしていくには、十分な資産も得た。そこで、彼は、あの壁画を再現しようとしたのです。単なる模倣では彼にとって意味がありません。自分の受けた衝撃を、別の形に昇華したい。芸術家の動機の中で、最も分かりやすいものの一つでしょうね。最初は、妻をモデルに、ピンホールカメラの原理で撮影しながら、その時の妻の状態を絵にし、それらを改めて組み合わせて作品にしようとしていたようです。アトリエの中から、その時の絵と写真を、あの子たちが見つけ出していました」
「ところが、その試みはモデルの死によって失敗に終わる」
「ええ。それから時間がたって、母親と面影の似てきた娘をモデルに、再び彼は生涯をかけた作品作りに挑みます。今度は、撮影した写真に、直接手を加えるようになった……あるいは、視力がほとんど失われていたのかもしれません。昼間のスケッチはなかった。
ところが、今度は、作成途中で、彼自身が死んでしまう」
「まるで、信じてませんが……死にとり付かれてるみたいだ」
「単純な引き算の結果かもしれません。結果として、黒木芳野は、昼は炎天下の下でピンホールカメラの撮影、夜は筆を入れていたわけですから……。
作業の量が、黒木芳野の体力よりも大きかった。引き算すればマイナスになる。彼の妻がモデルの時ならば耐えられたかもしれませんが……」
「それで、黒木芳野の最後の作品は、幻の作品になった……というわけか」
「さて、それはどうでしょう?」
「そうか、あいつらですね。白井純が同じアトリエを使って、黒木ユキを撮影して、それに黒木ユキが手を加える。
白井純が、カメラの視線を。黒木ユキが絵画の視線を、黒木芳野から受け継いだから」
「それは、おそらく引き算の論理から言えば、不可能です。彼女には、モデルと画家との両方を兼任するだけの体力は無いはずです。少なくとも、大きな作品を描ききるだけの技術が身についた頃には、彼らもやはり、体力的な問題を抱えるでしょう。では、どうすればよいか?」
それは、彼女の自問自答だった。
「一つの答えは、モデル、写真家、画家の三つの作業を三人に分割すればよいのです。
おそらくそれが、古代人の死後の世界から黒木芳野が感じ取ったインスピレーションが、受け継がれ、結晶した作品になるでしょう。それが、最善です」
そういって、彼女は悪戯っぽく微笑んだ。
「ね? あの二人、とってもお似合いだと思いませんか?」
信号は何度赤と青を繰り返しただろうか。俺は、思いだしたように、アクセルを踏み込んだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
死。それとあらがうもの。あるいは、過去への黙祷。
ぼんやりと、私はそんなことを考えていた。運転席に座る彼は、何を考えているだろう?
「……楽しみですね、どんな作品になるのか」
「でもあなたは、贋物を作れないわ。だって、黒木芳野が生み出した芸術家の作品だもの」
「それアリですか? まあ、作るか作らないかは、あいつらの作品を見てからのお楽しみってことで」
「そうね」
私はこっそり笑った。その気配を察してか、彼が口を開いた。
「……一つの答え、って言いましたよね、もう一つ、あるんですか?」
不意に、その景色が目に入って、私は叫んだ。
「停めて! 停めなさい!」
助手席のドアを開けて、駆け出す。まさか、本物が見られるとは思って居なかった。
「……どうしたんですか、一体」
「もう一つのほうです!」
駆け寄ってきた彼に、バックから取り出して、見せる。
「……ああ、そうか」
彼も、もう一つの答えを知る。その写真の構図は素晴らしかった。絵を描く少女。その風景画。絵の中央へ向かって、夏、秋、冬、春、と時間を遡って、絵の四隅の夏とキャンバスの外の夏とがひとつながりになっていた。
この写真家は何を撮ろうとしたのだろうか。
私は、それを想う。分かりやすすぎて、ズルイ。
「ねえ、これって、最初の作品でしょう?」
堪えきれなくなって笑う。
「二人の芸術家のサインが入ってる。ちょっと余計な番号も書いてあるけど……」