【 君のさす方へと 】
◆Qvzaeu.IrQ




344 :君がさす方へと ◆Qvzaeu.IrQ :2006/06/18(日) 20:18:47.14 ID:3pXZr5um0
 僕は、君の言葉を信じて歩き出す。
 虹のある方へ、光の射す方へと。

 
 星降る夜、僕は君と出逢った。
 光の射す丘で、君は月夜のした佇んでいた。
 星を反射する銀色の髪、夜の闇より深い黒い瞳、神様が創ったような君の顔。
 その美しさと、神秘さに僕は一目惚れした。
 君の話し方は、僕の知らない何かがあった。繊細で、伝説に出てくる人のように思った。
 影を作るその横顔も、光を反射する綺麗な服も、僕は知らなかった。
 僕の過ごした村じゃ、きっと見れない君の美しさ。
 星空を見上げながら、沢山の話をした。今じゃ、覚えてないことが多いけど。
 芝生の上に寝転んで、二人隣り合わせに沢山の話をした。
 どこから来たの? 夜遅くに何でこんな場所に居るの? なんてこと。
 緑と星の香りの中、君の淡い香りがした。
 少し冷えた風と、高く澄んだ君の声が聞こえた。
 そして、君は朝日とともに何処かに消えた。
 君の立つ場所は、オレンジ色の雲と薄い青に包まれている。
 光が上がる一瞬前。星の瞬きが段々と消え行く瞬間。
 君は太陽のほうへと駆け出し、光の中に消えた。
「虹の射す方へ、光の照らす大地へと、歩いてきて。その場所に私は居るから。その場所で、貴方のことを待っているよ」
 って一度微笑んで、君は光の向こうに走っていった。
 その言葉を信じて、僕は旅に出た。
 今まで、村から出た事のない僕は世界を見に旅立った。
 君を探して、僕は馴れた干草のにおいに別れを告げる。
 雨の降る渓谷を抜けた。光を求めながら。
 晴れた草原を越えた。露を振り払いながら。
 風吹く丘を登った。草木を踏みしめながら。
 無風の海を渡った。星の行方を捜しながら。
 何度も、君の横顔は夢なんじゃなかったのかと思った。


345 : ◆Qvzaeu.IrQ :2006/06/18(日) 20:20:22.00 ID:3pXZr5um0
 虹の射す方へ、光の方へ、歩きながら。
 その都度に、君の声が頭をよぎる。
「光の射すほうを目差して歩いて」
 その言葉を信じて、僕はまた光の射す方へと歩き出す。
 いつか、君に出会う為に。

 おしまい。



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