【 妖精の呪い 】
◆4lTwCuEYQQ





222 名前:妖精の呪い ◆4lTwCuEYQQ 投稿日:2006/06/12(月) 01:18:59.66
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私はきっと、少し特殊な人間だと思う。
子供の頃、妖精に呪いを掛けられたんだ。
その内容っていうのは――おっと、着いたみたいだね。
後で言う事にするよ。

人が言うに私は、華奢な感じの美人らしい。
私は現在高校二年生で、学力は平均なんだけど、告白された回数は数知れず。
そんな私だけど、食事はいつもここ、焼肉バイキング食べ放題の店。
いつものように、皿に山盛りの肉を取ってくる。
誰かが私を見てたらきっと吃驚するだろう。
どこにこれだけ入るのだろうか、と。
でも、そんな事はもう気にしないで。
私は一人でゆっくりと、しかし確実に肉を平らげていく。
いつもの量を平らげたので、席を立ち、帰る用意をする。

店を出たところで思い出す。
そういえば、どんな呪いだか言っていなかったね。
少し回想する。
あれは小学三年生の秋だった。


私は、家への帰り道を歩いていた。
この道は木に囲まれていて、気持ちいい道なのだけど、今日はそれどころではなかった。
なぜなら私は泣いているからだ。
泣いている原因は学校でのいじめ。
男子たちにデブ、と罵られたせいだ。
とぼとぼと俯いて歩いていると、横から音が聞こえた。
驚いて顔を上げると、そこには本でしか見たことの無い、透明な羽が四枚背中についた、妖精らしきものが浮いていた。


223 名前:妖精の呪い ◆4lTwCuEYQQ 投稿日:2006/06/12(月) 01:19:21.15 xTmHSKtv0
妖精は私に問いかけてきた。
「君は、どうなりたい?」
抽象的な質問だ、と思い返してみてそう思う。
しかしこの頃の私は、疑う事を知らない。
「あいつらをみかえしたい」
「どういう風に見返してやりたい?」
妖精は不気味な笑みを作って私を見てきた。
「やせてびじんになりたい」
「そう、じゃあ僕がその願いを叶えてあげよう。」
「うん!」
力強く私は頷いた。
妖精が指を鳴らすと、私の体は一瞬光に包まれた。
「うわ〜すご〜い」
「でもね、これは呪いだよ。君は太れなくなった」
その言葉に私は、冷水を引っ掛けられたように吃驚した。
いつの間にか止まっていた涙が、また溢れ出した。

泣きながら、後ろも振り向かず走って家に帰ると、お母さんに抱きついた。
何故かお母さんは戸惑っていた。
「お母さん?」
私が問いかけると。
「かえ……で?」
「うん、そうだよ」
「何で、そんなに、やせてるの?」
今度は私が戸惑った。
「え?」
お母さんから離れて鏡を見にいく。
見事にやせている。
「ほんとうだ」


224 名前:妖精の呪い ◆4lTwCuEYQQ 投稿日:2006/06/12(月) 01:19:39.98 xTmHSKtv0
妖精のした事を信じる気になった私は、お母さんに呪いと妖精について話す。
当たり前だけど最初は信じてくれなかった。
私は困ってポケットに手を入れたら、これはもう丁寧に、妖精が書いたとしか思えない紙が出てきた。
綺麗な字でこう書いてあった。

君はもう太れない。
しかも、たくさん食べないと、えいようぶそくでしぬから、ちゅういしてね。
          F

お母さんもこれを見て焦ったのか、信じる、信じるからね、と言って台所にすっ飛んでいった。

その日の晩御飯は、私のだけ特盛でお父さんが帰ってきて驚いていたが、お母さんから聞いて納得したようだ。


そんなこんなで、ここまで生きてきたわけ。
いきなり、呪いを掛けた妖精は許せないけれど。
しかし私は、多少あの妖精に感謝している。
あれが無かったら私は、一生コンプレックスを引きずっていたかもしれないと思うから。


だけど、もう一回太ってみたくなり。
焼肉とかカロリーの高いものを選んでやけ食いしてる最近の私。  fin



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