【 噂収集機 】
◆4lTwCuEYQQ




716 名前:噂収集機 ◆4lTwCuEYQQ :2006/06/04(日) 21:02:09.48 ID:HLr/1yQ30 ?
T博士が噂収集機という物を発明した。

という記事を一ヶ月前ほどに朝刊で見た。
このごろ小型化が進んでいるので、ポケベル程度の大きさらしい。
録音機みたいな物なのだけれど、高性能なAIのおかげで何処から何処までが噂、と自動的に判断してくれるらしい。
らしいというのは、私が使っている友達の友達から聞いただけの話だからだ。
最近、件の物は若者世代に人気で、爆発的に売れているらしい。
かくいう私のクラスでも、六十%以上の人が持っている。
だから私も流行に乗るため、明日買おうかなと迷っているところだ。

翌日、私は学校が終わった後、量販店に買いに行く事にした。
録音した物を記録するの為のメモリーカードも合わせて、痛い出費だったけど、流行に乗るためならまあ、仕方ない。
バイト、行こうかなあ。

家に着き、噂収集機を起動させる。
まずは名前を呼んで登録しないといけないみたいだ。
登録したら名前を呼んで、ボイスコマンドで起動や、録音した噂等も聞けるみたい。
面倒臭いのでシュウキ――集鬼、なんてどうだろう?
安直過ぎる気もしたけど、それで登録した。


717 名前:噂収集機 ◆4lTwCuEYQQ :2006/06/04(日) 21:02:34.07 ID:HLr/1yQ30 ?
翌日、学校校門前。
家で何度も練習したコマンドを繰り返す。
「集鬼、ブートスタート」
ピッ。
「集鬼、コレクトスタート」
ピッ。
別に日本語でもいいんだけどね。
ポケットから出して作動確認した後、仕舞い直して学校へ入っていく。

「おはよ〜、とも」
いつものように私から挨拶をする。
「おはよ、あい」
「ともも買ったんだね。噂収集機」
「も、って事はあいも買ったんだ」
「ある程度集まったら、データ交換しようね」
「そうしようね」

それから三日間、私は人込みを歩いて噂集めに奔走した。
一日の終わりには、
「集鬼、ゴシッププレイ」
とコマンドを入れて、収集した噂を確認する事が日課になっている。
しかし、やはり人込みだと取れる噂は質が低く、自分に関係ないものばかりだった。
今度は学校で、意識的に取っていこうと思った。

学校で噂を取っていったは、いいけれど、どれもこれも、誰と誰が付き合ってるとかいないとか、そんなものだけだった。
所詮噂なんてそんな物なのだなと、実感したのだった。

噂収集機のAIのプログラムを覗いて、情報の取捨選択の仕方を見て、ああ、こんな風にやっているんだ、と納得して。
面白いなと思って、情報屋になったのは別の話。  fin



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