【 噂 】
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31 :光の行方 ◆qvzaeu.irq :2006/05/29(月) 22:47:22.41 id:jjvcbboj0
 星降りの丘を目差して、君の手を取り、僕はただこの道を歩く。
 星明りの照らすこの道は、どこまでも長く暗い。遥か山の向こうの輝きを目差して、僕らはただ歩く。木々がざわめく音が聞こえる。覆う葉の向こうを目差して、僕は君の手を離さぬように歩いていく。木々を縫って見える光の行方を目差して。
 僕の右手を君は、握り締めてきた。微笑む君の横顔が月明かりに照らされている。
 君の気持ちを知りたくって、君を近くに感じたくって強く強く握り返す。暗い道を歩いていく。

 貴方はいつだって、私の中で輝く光のようなもの。
 独りぼっちの私の傍にいつだっていてくれた。踏み出せぬ一歩も、貴方がいたから歩めたんだ。
 握ったこの手を離さないで。星明りだけを頼りに、私たちは歩いていく。緩やかな坂を登っていく。言葉はないけど貴方のコトを強く感じるよ。星の降る丘を目差して、迷わないように貴方の右手だけを頼りに歩く。

 君と出会ったのは、夕焼けの差し込む教室だった。君はいつだって、淡く微笑む。どんな時も、危ういバランスで君は微笑んだ。
 夜風が吹き抜けて、君の髪を揺らす。星明りを映し出す真っ黒な髪、光の行方を追う、黒い瞳。いつも傍で見ていた横顔がある。
 君を守りたくって、僕は歩いてきた。その危うい笑顔を守りたくって、僕は何かに向けて走っていたんだ。
 どんな時も決して泣かない君、どんな時も人と距離を置く君、独りぼっちの君。
 そんな君の傍にいてくて、僕は歩いてきたんだ。あと少し、光の向こうで何かがつかめるって思う。
 握った手は震えているけど、僕らは立ち止まらずに歩いていく。

 貴方と歩いてきた道は、暗くって足跡すら見えない。
 この道の先には光があって、かすかに覗く木々の先から星明りが見えるよ。
 貴方とは、よく喧嘩をしたよね。沢山のコトがあった。ほほえましい事ばかりじゃない。
 貴方と私は解り合えないよ、きっと。これからも沢山のことをすれ違う。
 だけど、だからこそ光を見たいよ。貴方と一緒に星明りの指す場所へ。
 流れる時の中で、星のように輝く貴方を見つけたから。
 この道は暗いけど、歩いてきた場所は暗闇だけど、それでも進めるよ。少し怖いけど。
 貴方の手があるから、どこまでも行けるよ。私たちの光の方へと歩く。


33 :光の行方 ◆qvzaeu.irq :2006/05/29(月) 22:48:08.55 id:jjvcbboj0
「そろそろ頂上だけど、大丈夫? 疲れてない?」
「私なら大丈夫だよ」
「うん、そっか。それじゃあ、あと少しだから歩こう」
「うん」
「今から行く場所はね、この時期凄く流れ星が見えるんだよ。それでね、綺麗だからどうしても見せたいんだ」
「うん」
「あはは、ごめん。夜遅くに急に連れ出したから、疲れているかな? それとも流れ星って興味ない?」
「そんなことない。ちょっと歩いて疲れたけど」
「ここは暗いから、足元も見えないしね。余計疲れるよね、懐中電灯とか持ってくれば良かった。ごめん」
「大丈夫。月明かりも見えるし、もう着くから」

 星の下で君の手を繋ぐよ。
 これからも、どこか遠くを目差して歩いていきたいから。
 
 星の下で貴方の手を繋ぐ。
 光り輝く未来を見たいから。

 今、星降る丘で前を向いていく。
 流れる星よ、願いを聞いて。
 二人で光り輝く未来が欲しい。
 光の行方を捜して、ここまできたから。

 終わり


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