【 それでも俺はやってない 】
◆czxS/EpN86




58 :No.13 それでも俺はやってない 1/3 ◇czxS/EpN86:08/04/13 23:54:38 ID:jypmFR7F
「いいか、これからは夏だけじゃないんだ、春こそが少女を大人に変えるんだよ!」
「そういう先輩の頭の中は一年中祭ばやしが聞こえてきそうですがね」
「バカ野朗だなお前、いいから読んでみろっての!」
 そう言って先輩から突き出された某ホットドッグプレスが、全ての始まりだった。


 内容自体は大したことなんかない。やれ卒業シーズンで、これまで抑圧されて獣の本能が目覚める、とかそういう内容だった。
まぁその辺は割愛しておこう。確か夏頃は、「暑さが女を召豹に変える」とかそんな記事が載っていた気がする。まぁそんな物はどうでもいいのだ。
真に驚愕したのは、次の一文だ。
『本誌アンケート!男子高校生100人中78人は非童貞』

「まさか…そんな…!」
思わずそんな呟きがもれてしまった。
「そうだろうそうだろう、と言うわけでだな、早速明日あたり、大学院のおねーさま方をナンパしに行こうと…」
何事か話す先輩には早めにいい病院をお探しいただくとしてもだ、この数字にはびっくりだ。

 だがしかし待って欲しい。大抵こういう数字は誇大が含まれているものだ。しかし、その分をつつましく20人ほど差し引いたとしても、
58人、6割近い男はすでに女性のよくわからない部分に、自身のよくわからない物を(以下略)しているのだ。

 対する俺はこの年にもなって、未だ母親以外の女性と触れ合ったことさえない。一度もだ、一度もだぞ!
もうダメだ、神は死んだ。

59 :No.13 それでも俺はやってない 2/3 ◇czxS/EpN86:08/04/13 23:54:50 ID:jypmFR7F
 「俺は…どうすればいいんだ…!」


 俺は冷静になって考えてみる事にした。
そうさ、2人に1人がアッチッチな事になっているなんて、そんな訳が無い。だがもしも…
「もしも…?」
 ダメだ、もしもなんて考えるな。
「もしも…こんな事になっているのが、俺だけなんだとしたら…?」
 そうだとしてもだ、俺にだけこんな例外的エラー発生状態だなんて、どうにも信じられない。いやありえない。
マンガじゃないんだから、こんな形で奇跡なんて起こされてたまるか。

 ん?マンガ?

 
 発想の転換というやつだ。俺は気付いてしまったんだ。この世界の真理に。
『当たり前にあるべきものが、俺にだけは存在しない』
 俺の場合は異性とのとの甘く切ない思い出がそれに当たるだろう。

 何故俺にはそれが存在しないのか。
俺は大胆な仮説を立てた。俺はきっと何らかの形で、過去に童貞の呪いをかけられたに違いない。
きっと俺が非童貞になることで非常に不利になる勢力が、この世のどこかにいるに違いない。
そして俺はそれに関する記憶を消去され、何も分からぬまま日々を送ってきた。
 そう考えると納得が行き過ぎる。何故俺には女の子が誰も声をかけてこないのか。

 そしてたどり着いた結論、それは、
『俺はマンガの世界の主人公で、その呪いをとく為に旅に出る必要がある』
 ということだった。

60 :No.13 それでも俺はやってない 3/3 ◇czxS/EpN86:08/04/13 23:55:01 ID:jypmFR7F
 「ふぅ…」
 

 そう考えると、非常に納得がいくのだ。

 何故俺がこんな深夜に、アパートのベランダに侵入して裸になっているのか。
これは俺の意思ではなく、この世界の創造主がそうしろと俺を操ったに違いないのだ。

 その証拠に、この部屋の住人である女の子を見たとたんどうしようもなくムラムラしてしまい、そこから先の記憶があいまいだ。
そうだ、そうに決まっている。じゃないと…
 その先は考えないでおこう。

 (第一話、主人公とヒロインの、運命的な出会いってトコかな…?第一印象は大切だな)
 俺はこれから始まる大冒険の予感にかつてない興奮を覚えながら、そっとベランダのドアを開け…られない。
「くそ、鍵がかかってやがる!」
 仕方ない、割って入る事にしよう。

ガチャン、パリン!
大きな音を立てガラスが割れる。

俺は割れたガラスに気をつけて、そっと足を踏み入れた。
                               〈了〉



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