【 8行小説〜学園編〜 】
◆LBPyCcG946




40 :No.09 8行小説〜学園編〜1/5 ◇LBPyCcG946:08/04/13 23:36:02 ID:jypmFR7F
 まず始めに、この作品は、突っ込みのハルカ、超元気なナツコ、ド変態のアキオ、絶対喋らないマ
フユ。この4人の平穏な学園生活を描いた、4コマ漫画のような8行小説の集まりです。部屋を明る
くて、ご自宅のテレビから10メートル以上離れてご閲覧ください。テレビが爆発します。それでは、
ごゆるりと4人の生活の一部をお楽しみください。


『変態と』
 アキオとマフユが、教室の隅っこで、両者無言で見つめあっている。といって、恋人という訳では
ない。マフユは元々無口なだけで、アキオは脳ミソが腐ってるだけだ。
「ちょっと違うな……」
 とマフユの眼鏡を一旦外して、今度は猫耳(持参)をつけてしげしげ眺めるアキオ。
「……」
 マフユは何をする事もなく、人形のようにアキオを見つめている。
 次に猫耳を外して、アキオが自らの鞄からブラジャーを取り出した所で、ハルカが登場。
「何しようとしてんだ、この変態!」

『掃除当番』
 今日の掃除当番はハルカとナツコ。もし、突っ込みがいなくなると、ボケはどんな風になるのか。
これは、ハルカが先生に呼ばれて、ナツコからほんの5分目を離した隙に起きた出来事である。
 早速ほうきで遊びだしたナツコ。手のひらに載せてフラフラとして……。何気なく置いてあったペ
ットボトルにヒット。中身が教室に飛び散る。「これはまずい」とハルカが帰ってくる前に片付ける
ため、慌てて手に取ったのはハルカのカーディガン。気づいた時には既に遅し、びちょびちょに濡れ
ているカーディガンを前に途方に暮れるナツコ。気を取り直し、それを乾かすため、教室の窓を開き、
干そうとした瞬間、運の悪い事に突風。そして風にさらわれるハルカのカーディガン。
 そんなナツコの後ろには、拳を握りわなわなと震えるハルカの姿が……。


41 :No.09 8行小説〜学園編〜2/5 ◇LBPyCcG946:08/04/13 23:36:18 ID:jypmFR7F
『まったいら』
「おはようナツコ。今日も良いおっぱいだな、それでひと財産築くつもりかな?」
「あはは、アキオ君キモーい」
 なんて朝の挨拶が日常の教室。
「お、今度はマフユじゃないか。形の良いおっぱいだな。グッドデザイン賞をあげよう」
「……」
 と、そこに貧乳のハルカがやってきて、
「ハルカもおはよう。今日もまったいらだな! ……ってこれハルカの机じゃないか」
「殺されたい?」

『テスト勉強』
 明日はいよいよ、待ちに待ってない期末テスト。勉強の出来ないナツコは、ハルカに頼み込んだ。
「仕方ないなぁ……」とため息を吐きながらも、なんだかんだ言って丁寧に教えるハルカ。
「いい? この式で出た数字に、円周率のπをかけて……」
「円周率って無限なんだよねー。無限にアップルパイがあったら最高だよねー」
「それでこれを代入して、エックスの3乗を後ろにつける」
「エックス参上! ってなんかかっこ良いよねー」
「あんたやる気ないだろ」
「めちゃくちゃあるよー」笑顔のナツコに勝てる者はいなかった。

『通学風景』
「今日、夢を見たんだ。ふっと目を覚ますと、そこはいつもの自分の部屋でな、横にあった時計を見
ると、いつも起きる時間よりも大きく遅れてる。俺は、しまった! 遅刻だ! と思った。そしたら
それ自体が、夢だったんだよ。もう1度目を覚ますと、本物の目覚ましは、まだ1時間も早い時間を
刺していた。俺は安心してもう1度眠りにつく事が出来たよ」
「あ、それアタシも似たようなのあるかもー。休みの日はちょっと早めに目覚まし時計をセットして、
わざと起きて二度寝を楽しむんだよね!」
「いや、それ全然違うんだが……」
 アキオとナツコの、登校中の会話だが、彼らは既に2時間遅刻している。


42 :No.09 8行小説〜学園編〜3/5 ◇LBPyCcG946:08/04/13 23:36:30 ID:jypmFR7F
『マフユの日常』
 この無口な少女、マフユの目の前には、一体どんな光景が広がっているのだろう。
 その虚無に満ちた瞳は、通学路の白線を追っているように見える。それはマフユの自宅へと向かう
一本の道であるのと同時に、退屈な日常の中で、極わずかな、注目すべき事の下に引くアンダーライ
ンでもある。その道をマフユは、出席簿の丸の数だけ歩いてきて、これから卒業までに、まだ何歩も
歩く事になるだろう。マフユの足元に引かれたラインは、時に欠け、時にずれ、時に清々しい程に真
っ白だ。それは、ただの車線と歩道を分ける線ではなく、マフユの過去と未来を分ける線なのだ。
 途端、マフユの目の前が真っ暗になった。白線も見えない、道の先も見えない世界だ。マフユはそ
の目の前にかかった物を、自らの両手で剥ぎ取る。……ハルカの、カーディガン?

『スカートの下に』
 ハルカがスカートの下にジャージを着ている。それを見て、アキオはコンマ1秒で沸点に達する。
「おい、ハルカ。お前に1言、言っておかなければならない事が2つある。まずは1つ、二度と俺の
この高貴なる2つの眼に、そのスカートとジャージという最悪の組み合わせを写すな。なぜなら、ス
カートはスカートとしての良さがあり、ジャージにはジャージとしての良さがあるからだ。そしてそ
れらはいわば全く別次元に存在し、共存する事などありえない。いいか? ちょっと想像してみろ、
カレーライスにハヤシライスかける奴がいるか? いないだろう。ジャージとスカートは履くという
共通の目的を持っていながらも、全く違う物だ。そして2つ目。スカートは何の為に存在しているか
を考えてみろ。そう、見えそうで見えないパンツが存在している理由を」「アキオ、8行に収まらな

『通学風景2』
「今日も、夢を見たんだ。夢の中の僕はまた寝ていた。そして目覚ましも鳴っていないのに、ふっと
目が覚めて、時計を見ると2時間も早い。しかし僕は、これ自体が夢なんだと気づいた。だからそれ
を確認するために、もう1度起きようとした。そして実際に目が覚めると、ちょうど目覚ましの鳴る
1分前だったんだ。おかげで今日は遅刻せずに済みそうだよ」
「あ〜、それあるねー。私も今日は、なぜか目覚まし無しで起きれたよ。目覚ましが鳴る寸前に止め
ると、『勝った』って気分になるね!」
「だから、それ全然違うんだが」
 アキオとナツコの、登校中の会話だが、今日は日曜日だ。

43 :No.09 8行小説〜学園編〜4/5 ◇LBPyCcG946:08/04/13 23:36:44 ID:jypmFR7F
『柔軟体操』
 4時間目は体育の時間。柔軟体操をしているハルカがいる。
「すごいやわらかいー」
「ちょ、どこ触ってんのよ……!」
 ハルカとナツコの甘美なる会話が聞こえる。
「いいなーあたしも体柔らかくなりたいよ。うらやましー」
 ちょっと得意げな顔をするハルカ。足を広げて、両手をその先に延ばし、床に突っ伏す。
「あ、もの凄い猫背の人だと思えば、全然うらやましくない!」
 満面の笑顔でそういうナツコに、ハルカはもはや何も言えなかった。

『持ち物検査』
 抜き打ち検査は事前予告なく行われた。でなければ、抜き打ちではないからだ。一部の心無い生徒
達のせいで、ごく一般的な生徒は面倒を強要される。アキオもその中の1人だった。
 まずい、アキオは思った。自分の鞄の中には、例のアレが未だに入っている。持ち物検査で出てく
れば、クラス中の全員から後ろ指を差される事は必須。
 しかしうろたえるアキオではない。一流の変態は、こんな時にこそ本領を発揮するのだ。
 普段から練習しているテクニックを駆使し、冷静かつ的確にカバンの中のアレを、自分の服の隙間
にさっといれる。誰にもバレていない。アキオはにやりとほくそえんだ。
 教室の中でブラジャーを装着しながら、アキオはにやりとほくそえんだ。

『正体』
 一見、ただの無口な少女に見えるマフユ。だがしかし、その正体はなんと、日本の誇る最強のスパ
イだった! 一般的な学生として学園生活を営む傍ら、諜報活動を続けるマフユ。そんなマフユの前
に、未だかつて無い困難な任務の依頼がやってくる! さあ、どうするマフユ! がんばれマフユ!
「っていう設定はどうかなー?」
「ナツコ、勝手なナレーション入れないでよ」
 ハルカが突っ込む。当のマフユは、2人の会話に気づいていない。2人がマフユの事をじっと見つ
めていると、席から立ち上がった。その拍子に、机の上に出してあった鞄から何かが落ちた。
「……銃?」


44 :No.09 8行小説〜学園編〜5/5 ◇LBPyCcG946:08/04/13 23:36:59 ID:jypmFR7F
『真相』
「あはは、なんだー。本当にスパイなのかと思ってびっくりしちゃったよ」
 ナツコの笑い声。それにつられて、ハルカも笑う。
「それにしても、マフユに弟君がいたなんて初耳ね」
 マフユの鞄から落ちた銃は、その弟が間違って入れたエアガンだった。真相とは、かくも普通な物
である。と、そこにアキオが通りかかる。
「弟さんがいるのか……」
「……もしかして、あんたそういう方向にも興味ある訳?」
「何を言う。俺はショタじゃないぞ。ただ姉がいたら、女装に金がかからなくていいと思っただけだ」

『通学風景3』
 マフユが家に帰ると、そこには1枚のDVDが置いてあった。すかさずそれを再生するマフユ。液
晶のテレビに男の黒い影が映る。
「今度の任務を伝えよう。来週来日する某国のある要人を暗殺して欲しい。詳しい情報は……」
 淡々と語る影に、黙って耳を傾けるマフユ。鞄から銃を取り出し、メンテナンスを行う。
「それでは、よろしく頼むぞ。なお、このDVDは自動的に破壊される」
 その言葉を聞いて、一瞬でテレビから飛びのくマフユ。流石にプロだけあって、素晴らしい身のこ
なしだ。瞬間、今までマフユが見ていたテレビが、爆発した。
「……っていう夢を見てたんだ。ああ、今日も遅刻だ」

 さて、今回の4人のお話はこれにて終了です。最後までお付き合いしていただいて、真にありがと
うございました。たった8行の日常の繰り返しでしたが、もしほんの少しでも楽しんでいただけたな
ら、これ幸いです。そしてこれからも、4人のお話はまだまだ続きますが、そろそろお別れのお時間
が来たようです。それでは、またの機会にお会いしましょう。さようなら。






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