【 時代 】
◆AF/vufH7mQ




12 :No.03 時代 1/5 ◇AF/vufH7mQ:08/04/05 09:25:24 ID:KX2VchaT
  時代

 王朝の交代を管理する役所があった。その役所は、大和朝廷時代から日本に存在し、
王朝が交代するたびに、日本の支配者に、日本の支配者である証を継承させてきたのだった。
江戸時代が終わり、帝国時代に変わる時、将軍徳川慶喜から明治天皇に日本の支配者である証
「縄文棍棒」が手渡された。王朝の交代を管理する役所は「縄文棍棒」が明治天皇の手に渡った
時点で、日本の支配権は明治政府にあると見きわめ、真の日本の歴史を記した縄文書記に、
日本の支配権は徳川より天子に渡されたと書き加えた。
 そのまま、縄文棍棒は天皇に継承され、第二次世界大戦の敗戦をうけて、
昭和天皇から時の総理大臣鈴木貫太郎に手渡された。これによって、王朝の交代を管理する役所は
日本の支配者は天皇から総理大臣に移ったと判断し、帝国時代を終え、民主時代を始めた。
縄文棍棒は、秘かに、歴代総理大臣に継承されることとなった。ついでに、ふれておくと、
縄文棍棒がアメリカ人の手に渡ったことは一度もない。よって、日本の支配権は、占領下にあっても
日本人の手にあったのである。
 今、この縄文棍棒は、現在の総理大臣福田康夫の手にあるのである。

13 :No.03 時代 2/5 ◇AF/vufH7mQ:08/04/05 09:25:41 ID:KX2VchaT
 少年、東日乃丸(ひがし ひのまる)は民主時代の愚かさを嘆いていた。
「民主主義は堕落し、国民の士気を著しく低下させている。街にはニートがあふれ、
女たちは家事見習と称してニート同然の暮らしをしている。民主時代は終わるのだ。
革命を起こさなければならない。三権分立を討ち倒し、新時代を始めるんだ」
 日乃丸の声を聞いて、西宮遥(にしみや はるか)はつれなそうに答えた。
「あんた、バカじゃないの。新時代って、どんな時代よ。あんたの空っぽな頭で、
民主主義より立派な政治が考えられるの」
 日乃丸は答えた。
「考えられるよ、遥。ゲーム政治時代だ。総理大臣の選出をひとつのゲームにして、
ゲームの勝者がこの国の政治を動かすんだ。ゲームの面白さ、熱中度によって、
政治にはまり込む中毒者が続出するよ。ゲーム政治こそ、民主主義にとって代わる
新しい時代だ」
 遥は答える。
「総理大臣を決めるゲームって、どんなゲームなの?」
「安全武器による戦争ゲームだ。これからは総理大臣の座を力づくで毎日、
一分一秒の油断もなく、守りつづけなくてはならないんだ。総理大臣争奪戦への
参加は当然、自由だ。日本人全員が、総理大臣の座をかけて争いつづける
安全武器による戦国時代が始まるんだ」
「そのゲーム政治時代の初代チャンピオンには誰がなるっていうの」
「当然、おれだよ」
 日乃丸は答えた。

14 :No.03 時代 3/5 ◇AF/vufH7mQ:08/04/05 09:25:58 ID:KX2VchaT
 日乃丸と遥は、首相官邸に真っ昼間のなか、正面から堂々と進軍していった。
「待て。ここから先は立ち入り禁止だ」
 警備員が止める。
「押し通る」
 日乃丸が警備員を殴り飛ばした。
「なにい、こいつ正気か。いったい何のつもりだ」
「革命だよ。おれたち二人が日本に革命を起こす」
「革命だとお。バカな、ここをどこだと思っている。日本の政治の中枢、首相官邸だぞ」
「当然、知ってのことだ」
「公安を公安を呼べ。自衛隊にも連絡を。総理、今こそ、
革命家に対して自衛隊の出撃を命じください。我々では防ぎきれない、ぶお」
 警備員はふっとんだ。
 首相官邸には、福田康夫が待っていた。
「ふふふふふふ、革命の戦士よ。はたして、わたしまで手がとどきますかな」
 福田康夫がいった。
 日乃丸と遥は歩く。一人、また、一人と警備員がふっとんだ。
 バラバラバラバラとヘリコプターの音がし、自衛隊員が降下してきた。
「自衛隊最高司令官総理大臣福田康夫の名において、革命の戦士に対し、集団自衛権の行使を命令する」
 首相官邸に降下した自衛隊員が遥に向かって、銃を撃った。
 バキッ。日乃丸がその弾丸をつかみとり、握りつぶす。
「面白れえ。やっと本気を出したみたいだな」
 日乃丸がいった。
「何をいっているんです。わたしはまだ本気の20%も出してはいませんよ」
 福田康夫が答えた。

15 :No.03 時代 4/5 ◇AF/vufH7mQ:08/04/05 09:26:14 ID:KX2VchaT
 日乃丸と遥が降りそそぐ弾丸の雨の中、福田康夫の手前五メートルまで近づいていた。
だが、日乃丸は、自分がそれ以上、福田康夫に近づけないことを知って、驚いた。
「どういうことだ」
「ふふふふふふ、わたしは七種類の結界によって、身を守られている。
日本の真の支配者とはそういうものなのですよ」
「あまい。気が乱れているぞ。この結界は、歪んでいる。踏み込める」
「なんですと。わたしの結界が歪んでいるということは、
日本国民の気が歪んでいることを意味する。これは由々しき問題だ。
どうやら、わたしが本気を出さなければならないようですな。
男、福田康夫が、己の拳でもってお相手いたしましょう」
 福田康夫が日乃丸を殴ろうとした。しかし、紙一重で見切って、日乃丸はパンチをかわす。
日乃丸のカウンターが福田康夫をとらえた。ふっとぶ福田康夫。
「こんなものではないぞ。どうやら、わたしの真の姿を見せなければならないようですな」
 福田康夫の体が裂け、中から一匹の怪物が姿を現した。
「どうやら、それが最後の手段のようだな。おまえは自分の切り札を先に見せてしまった。
それがおまえの敗因だ」
 日乃丸は福田康夫だった怪物の体に腕を突っこんで、体の中から一本の棍棒をとりだした。
それは、日本の支配者の証、縄文棍棒だった。

16 :No.03 時代 5/5 ◇AF/vufH7mQ:08/04/05 09:26:30 ID:KX2VchaT
 王朝の交代を管理する役所は、縄文棍棒が福田康夫から東日乃丸の手に渡ったことを確かに確認した。
「これで、おまえの負けだ」
 日乃丸は叫んだ。崩れる福田康夫だった怪物の体。時代が、変わろうとしていた。
 縄文棍棒を手にした東日乃丸は、テレビの全番組緊急特番で革命の成功を宣言した。
「民主主義の時代は終わった。これからは、日本の支配権を力と力で奪い合うゲーム政治時代が始まる。
国会の解散を宣言する。首相官邸の崩壊を宣言する。最高裁判所の解体を宣言する。
文句があるなら、かかってこい。日本の支配権はおれの手の中にある。
誰でも、好きなやつが取りに来い」
 緊急特番は二十度にわたって再放送された。日本国民全員が、新しい時代が始まったことを認識した。
 その後、決起した日本国民の集団のいくつかと、東日乃丸は戦ったという。
東日乃丸は七十年にわたって縄文棍棒を守りきり、日本の支配者として七十年間、君臨した。
                                了



BACK−ほらの後ろ、隠れた煙◆ecJGKb18io  |  INDEXへ  |  NEXT−過去試験◆swIhawKD96