【 密なる上は密室で 】
◆AQPtidcoho




28 :No.08 密なる上は密室で 1/5 ◇AQPtidcoho:08/01/20 15:41:10 ID:YlS5K4gx
 …………………………………。
 ………………………………ん。
 ………まぶしい。でも、目脂が邪魔で開かない。それに、麻酔をかけられたみたいに、体の感覚がない。そう感じた直後に流れた、長時間正座を行った時のような血流の急激な流れによる麻痺。どうやら、無理な体勢で睡眠をとっていたようだ。
 どうにも視界を確保できないので、がむしゃらに体を左右に転がす。すると、ピシリッピシリッと痺れによる痛みを感じた。これは大して酷い痛みではないのだが、持続的に起こるので、その少量の痛みが蓄積してやがて疲労に変わり、
そのためかやたらと患部を動かさなくなってしまう。今僕はその状態で、しかもそれがどうしたことか旋毛から、指先、爪先、性器まで、選り取り見取りで行われている。一体全体どうしたことか。体の中で大袈裟なフェスティバルでも開催されているの
CLOSE
かどうかはさだかではないが、無駄なことを妄想しているうちに、痺れが痺れを切らしたようで、何処かに飛んでいってしまった。逸早く視界を
確保したいので、僕は右目蓋に人差し指を滑らせ、執拗に離婚を唱える愛人のように粘り強く、今だ離れる気配のない目脂に狙いを定め、指の腹で
小さく左右に転がす。思いの他でかい塊となったので、何故か達成感に満ち溢れる。しかし、隅の脂に手を掛けていた時、眼球を圧迫してしまい、
そのため恢復にタイムロスが生じてしまった。この差を埋めるべく、左目にも同様の処置を施した。やっとのことで右目の眼圧も戻り、
視覚の確保が可能になる。
 まず驚いたのは、僕の勢い余る性器がお目見えしたことだ。まったくもって不快だった、他人のグロテスク極まりない物でさえ目を伏せてしまう
というのに、自分の性器を惜し気もなく見る気なんぞなれないじゃないか。好き好んで日常生活に性器を披露する人間がいるものか。いて欲しくないと
願うばかりである。
 何か股間を隠す物はないかと起き上がるのが億劫な僕は、まだぼやけたままの視界に苦闘しながらも、あんよで手探りに下着を探した。すると、
手に伝わる感触。思わず手を引いてしまったがこれは綿の肌触りじゃない。明らかに人間の皮膚だった。頭をそちらに向けたまま、確認のために
恐る恐る触れてみる。しばらくぺたぺたと手をつけても大きな反応がなかったため、大まかな骨格と、肉の膨らみを感じ取ることができた。そして
視界が戻るのと同じ時、その肉塊も動き出した。
「…ん。ふああぁ」と大口を開いて酸素を吸収している。胴を起き上がらせても、尻にまで折れている黒の長髪は、少しながらその人の状況判断
に役立った。彼女が肺を喜ばせると、僕の
CLOSE
存在に気づき、素早い判断と条件反射により体をさっと壁のある方に後退した。「あんた誰なの。気違い」と自分の身が危険な状況に
晒されていると勘違いを起こしたか、彼女は、白を基調とすた無機質な側壁に、肩甲骨と尻を押し付け、五本指を壁に突き立て僕への
回避行動をとっているつもりだ。そりゃ、状況も把握できていない彼女をどうやって落ち着けようか。そんなことは出来ないし、今は
とにかく彼女と距離を取った方が良い。理解を深めようと性器をふらふらと踊らせる男が近づいてきたら只管逃げるに限るだろうな。
 怯えきった表情の彼女を背にしてしばらくとぼとぼと反対方向に出歩く。さて、こんな意味の分からないことを片付けて大学に行か
ないと、と、ここは一体どこだ。さっきはあの女のことで必死になっていたが、冷静になるとこの殺風景なスタジオのような空間に違
和感を憶えた。温かみの感じられない四角形の空間。その全面、外側から白光が差し込んでいて、大きく目を開けていられないぐらい


29 :No.08 密なる上は密室で 2/5 ◇AQPtidcoho:08/01/20 15:41:50 ID:YlS5K4gx
眩しい。と言っては語弊だし、実際そこまで眩しさを感じないが、とりあえず反対側に位置する彼女の顔と胸がはっきり見えると言っ
ては距離感に乏しい。距離としては、ありきたりだが東京ドーム分だろうか。家としては十分なぐらい広過ぎるし、牢屋にしたらなお
さらだ。もっとも、運動するには困らないが、知識人には死ぬほど暇を持て余すことになるのだろうが。
「ねえ…。ちょっと」どうやら心持ちが宜しくなったらしく、先程のヒステリックな喚き声はとうに失せていた。よかった、ようやく
話せる口になったか。女性を扱ったことがないから自分から抑制してもらうのが一番楽である。しかし、先程の警戒心から解かれるこ
とは無く、依然として僕の尻は彼女の方向に睨みを効かしている。ズボンがないのでポケットに手を突っ込むことが出来ず、非常に手
持ち無沙汰を感じたので、仕様がなしに前の方に平手を組むことにした。これでおそらくであるが彼女の方に振り向いても、先程より
は騒がれずに済むであろう。だが、あの女性も僕も、どちらも下着一枚つけていないというのが事実である。どちらも望んでやってい
るわけではなかろう。ましてや「ねえったら。なんか考え込んでる途中で失礼するけどさ」うるさいな人が考えてる時に。仕方なしに
CLOSE
声のする方に体を振り向かせる。少々イラついていたのが表情に出てしまった。彼女はありもしない胸を左腕で
隠しているが、そんなことしなくてもお前のプロポーションなど興味はないと思わず呟きそうになり、抑えた。
「あ、あ、あなたが誰か知らないし、こ、ここがどこかも分かんないけどさ。さっき、さっきからここの壁、近
づいている気がするんだよね」などとほざく。馬鹿か、LSDでもやっているのかこの小娘め。壁が近づくわけな
かろうが、と呆れて後方に振り返ると、白い壁は既に僕の鼻の先にあった。女が言っていたことが正しいという
事実より、十歩程前に進んだ筈なのにまた先程と変わらぬ位置に壁が存在していたことに驚愕し、情けないぐら
い貧弱な悲鳴を上げて尻餅をついた。日常的に考えれば予測のつかないことだったからだ。
「でしょ。でしょ。やっぱり壁が近づいてきてるんだよ」と自分の発言の信憑性が向上したことに呑気に嬉しが
っているが、そんなことについていちいち喜怒哀楽を見せている場合じゃなかろうに。とりあえず出来るだけの
状況を把握するために女に問い掛けた。「おいお前、名前と職業。それに出来ればどうしてここに放り込まれた
のかを言ってくれ」「ねえこの部屋ってあの映画のCUBE見たいじゃない」「それとここの脱出案を練ってくれ」
「ほら、四角で全面が清潔感漂うこの部屋、もしかしたら本当にCUBEじゃないの」全く噛み合わない。全く女と
いうのは、どうしてこうも聞く耳をもたないのか。これだから先の女性の地位向上は
CLOSE
期待出来ない。などと考えていた最中のことだ。僕は前方に向かい思いっきり弧を描いて
吹き飛び、ごろごろと性器をぶらぶら揺らしながら距離を取るように転がり、冷気を漂わ
す床が快く僕を受け止めた。彼女はそんな光景を見て「ほら、まただ。私の言ってたこと
合ってるでしょう」などとほざきやがる。糞ビッチめ、誰が手前のことを褒めてやるもの
か。そして前に折り体を起こすが、床に骨盤を打ち付けてしまい、非常に痛い思いをして
いる。もうそれほど自由には動けない。安全確保のため中央に寄ると、この女もつられる

30 :No.08 密なる上は密室で 3/5 ◇AQPtidcoho:08/01/20 15:42:31 ID:YlS5K4gx
ように来た。それにしてもなんだ、ちょっと前まで、両端の位置は目分量だが東京ドーム
一個分ぐらいの広さを保っていた筈なのに、今現在では安っぽいモデルルームの一部屋ほ
どでしかない。行こうと思えば端から端までの移動はそうも難しくない。これが良いこと
か悪いことか。僕は薄々勘繰ることとなった。僕はまだ名も知らぬ彼女の襟足を右手で鷲
掴む。「おい、そのCUBEってのは脱出口はどこにあったんだ」「痛い。痛い。止めて、そ
の手を離して」「質問の応答次第で握力は変動するぞ」「いたたた。分かったから。分か
ったから」このままだといくら経っても埒が明かない様子なので、手を離してやる。彼女
はわざとらしく咳き込み、野蛮、変態などとぶつぶつ呟いていた。
「それで。どうなったんだ」「乱暴な人、CUBEじゃ四方に脱出する物がついていたわよ」
「おおそうか」と早速右端の方に駆ける。彼女は付け加えるように「知的障害者以外、み
んな最後には死ぬんだけどね」と耳打つ。その言葉がずしりと響いた。望みの幅が収縮し
たと言うのだろ
CLOSE
うか。あ、また狭まった。なんということだ。もう、す
ぐそこまで壁は迫ってきている。ここまで来ると閉所恐
怖症者には耐えらぬ仕打ちだろう。下手に身動きさえ出
来やしない。白痴な彼女も流石にこの状況に危機感を憶
えずにはおらなんだ。慌てふためき、あっちでもないこ
っちでもないと落ち着く様子はない。今更そんなことを
したところで壁が迫るのを抑えることは出来ないだろう
し、良い脱出案が思い浮かぶわけでなし。この女を黙ら
せるために手刀を食らわせようかと思ったが、幾分映画
の見過ぎだということが分かった。時が経てば彼女も疲
労が見えて自主的に落ち着くであろう。しかしそんなの
んびりとしていれば何れかはこの壁が
CLOSE
僕の体よりも細くなって、僕
も彼女も肉塊になってしまう
ことに違いない。うわ、また
距離が縮んだ。なんというこ

31 :No.08 密なる上は密室で 4/5 ◇AQPtidcoho:08/01/20 15:43:18 ID:YlS5K4gx
とだ。もはや居住スペースに
しても狭すぎるほどだ。彼女
の挙動不審は止まることなく
むしろ、先程よりも一段と動
作が速まり、目や鼻から大量
の水分が放出している。言わ
ずもがな、実は僕も失禁をし
てしまった手前。この狭い空
間には彼女が溜めた涙と、僕
の小便が混じり
CLOSE
合っているの 
だ。嗚呼、も 
はや壁は目と 
鼻の位置、こ 
の状態が続け 
ば僕がトマト 
ジュースにな 
るのは時間の 
問題だろう。 
 それなら、 
僕は今のうち 
にやりたいこ 
と、貞操を喪 
失してしまお 
うと考えた。 
 表情を察し 
た彼女は僕か 
ら逃げ惑うよ 
うな態度を示 

32 :No.08 密なる上は密室で 5/5 ◇AQPtidcoho:08/01/20 15:43:47 ID:YlS5K4gx
したのだが
CLOSE
そんな 
抵抗は
もはや 
無意味
僕は今 
自分の
やりた 
いよう
に彼女 
を扱い
その様 
子はま
るで獣 
みたい
だ。 
CLOSE
ぎ 

ぁ 
 
 
 
 
CLOSED



BACK−密か心◆AOGu5v68Us  |  INDEXへ  |  NEXT−密かなる部屋の純愛◆0CH8r0HG.A