【 好敵手 】
◆JJyhEXv6NA




2 :No.01 好敵手1/4 ◇JJyhEXv6NA:07/09/08 03:29:09 ID:OsVUHIuf
「お前とは何時かこうなると思っていたよ、マックスキャプテン!」
「奇遇だな俺もそう思っていたさ、オメガキャノン!」
 二人とも両腕を水平に40度に上げ、両足をぴったりとくっ付け。
両足先を前に揃え、鶴が飛び立つ前のような格好で対峙している。
 決闘時のヒーローが取る伝統的なポーズだ!

 オメガキャノンが先手を取ると両腕を40度に挙げ、両足を揃えたまま宇宙まで飛んだ!
 大気圏を抜けると肩に付いたジェットを噴射する!
「シュゴゴゴゴ!!」
 そして地球に向かって落ちてゆく! 足先が大気との摩擦熱で真っ赤に染まる!

「超! 熱核爆裂撃ーーーーー!!! 死ねぇぇぇいぃぃぃぃぃ!!!!」

 解説しよう! 超熱核爆裂撃はキャノンオメガの超必殺技である!
三百三十三万度の高熱を足先に集めての飛び蹴り! 食らった相手は……死ぬ!

「ズギャアアアーーーーーー!!」
 轟音を立てて、オメガキャノンの蹴りがマックスキャプテンに迫る!

「危ない! 逃げてぇ! マックスキャプテン!」
 マックスキャプテンの恋人ビーナスコマチが悲鳴を上げる!

「フッ大丈夫さ、ビーナスコマチ、俺が此れしきのピンチ切り抜けられないと思っって……
ぶああああああぁぁぁああぁああ!!!」
 マックスキャプテンは、オメガキャノンの超熱核爆裂撃をまともに食らって1500m吹っ飛んだ!
 原因は台詞が長かったせいだ! 間接的にビーナスコマチのせいでもある!

「ウオォォォーーーーー!!!」
 オメガキャノンが勝利の雄叫びを上げる。
ギロリとビーナスコマチを睨むとコマチに詰め寄り腕を掴んだ。

3 :No.01 好敵手 2/4 ◇JJyhEXv6NA:07/09/08 03:29:51 ID:OsVUHIuf
「ビーナスコマチ! 俺は前からお前の事が!!」
 オメガキャノンがビーナスコマチに圧し掛かる。
「止めてッ!? オメガキャノン! 私にはマックスキャプテンと言う恋人が!!」

「奴はもう死んださ、大人しく俺の物になりな!」

「ヒッ!? い、嫌、止めてッ!! このケダモノーー!!」

「待て! 狼藉は其処までだオメガキャノンッ!!」

「誰だッ!? ……お、お前はマックスキャプテン!?
ば、馬鹿な!? 俺の超熱核爆裂撃を食らって生きて居られる筈が!?」

「フフフ、残念だったな、オメガキャノン! 俺は命を121個持っているのだッ!!」

「な、何ィーーーー!!?」

 驚愕の声が響く暗闇に、ガサリと異質な音が飛び込む。
「こんな暗い所で何やってんのお嬢?」
 私は後ろから声を掛けられ、突然現実に引き戻された。
勢いよく振り返ると後ろにひょろ長い男の影が立っていた。

「わっ!? わわッ!? ま、真清! 何で此処にッ!?」
 私は手にしていた物を、咄嗟に体の後ろ側に隠す。
や、やばい此れだけは何としても隠し通さねば。見つかってしまえばなんと言われるか。

「いや何って、襖の立て付けが悪いんで大工道具を取りにって……
所で今、後ろに隠したの何?」
 真清は目聡く私が後ろに隠した物を見付け追求する。

4 :No.01 好敵手 3/4 ◇JJyhEXv6NA:07/09/08 03:30:23 ID:OsVUHIuf
「い、いや、何でも無い、何でも無いぞ」
 私はしどろもどろになりながら追求をかわそうとするが。
 真清が目を輝かせ、何かに気が付いた様な顔をする。
 いつもは鈍い癖にこんな時だけ勘が良い……

「ははーん、お嬢さてはつまみ食いだな? どれ見せてみろ」
 真清が近づき私を押し退け、後ろに隠してある物を奪い取ろうとする。
 悲しいけれど、体格差は如何ともしがたい、抵抗したがあっと言うまに
押し負けて、後ろの物を奪われる。
「わーわーッ!? 止めろ! 見るなッ!!」

「何此れ? 人形……か?」
 真清の手には宇宙的なデザインの真っ赤な服を着て、
グリコのランナーのようなポーズをとった。プラスチックのお人形が握られている。
 テカテカとした光沢がまるで「助けて」と言っているかのように光る。

「マ、マックスキャプテン! か、返せ!」

5 :No.01 好敵手 4/4 ◇JJyhEXv6NA:07/09/08 03:30:53 ID:OsVUHIuf
 真清が手を伸ばし人形を高く掲げる、取り返そうと飛びつくが絶望的に高さが足りない。

「お譲、もう今年で中学生でしょ、何時までもお人形遊びでも無いんじゃないですか?」

「う、五月蝿い!! 良いから返せよッ!!」
 何度も飛びつくが、のろりくらりと逃げられて一向に埒が明かない。
 真清のニヤついた顔がムカついたので、がら空きの鳩尾に思いっ切りパンチを食らわせた。

「ぐぇッ!?」と蛙が潰れたような声を出して真清の体がくの字に曲がる。
 長身が折れ曲がり、手の届く高さになったので人形を奪い返す。

「ぐ、ぐうくくく、こ、此処までやるこた無いでしょ」
 真清が呻き声を上げ、搾り出すように非難を吐き出す。

「な、何だよお前が悪いんじゃないか、人をからかうから……
何だそんな目で私を見て…………やる気か?」
 私は両手を体の前で交差させファイティングポーズを取った。
 真清はスッと立ち上がると、顔に手を当てケラケラと笑っている。

「何時……かこうなると思っていたよ……。お嬢ッ!」
「奇遇だな私もそう思っていたさ、真清ッ!」
 私は自然と駆け出し、真清の鳩尾目掛けて拳を突き出していた――――。

 二人の永遠に続く、何時果てるとも知れない戦いは。
 夕方――――お腹が空く頃に終結した。

 オワリ



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