67 名前:No.17 ミーちゃんえミ☆ 1/2 ◇VXDElOORQI[] 投稿日:07/07/01(日) 23:40:53 ID:+Xl9deu1
「もうすぐ入学式かー。入学式には桜咲いてるかなー」
つぼみがやっと膨らみ始めた桜並木を私とマーちゃんは並んで歩く。
「桜って年々咲くの遅くなってるらしいよ。温暖化の影響で」
「わかりやすい嘘を言うな」
「たっ! すぐ叩くのやめろよな。ミーちゃんの悪い癖だぞぉ」
「うるさい」
私はもう一度マーちゃんの頭をはたく。
「ったくもー。可愛い可愛い頭がひょうたん型になったらどうするのさー」
「私たちの入学式なんだからさ。桜咲いててほしいじゃん」
「私たちの……か」
マーちゃんは頭を擦りながらまだ花の咲いてない桜の木へと視線を向ける。その声を普段の悪ふざ
けばかりしているマーちゃんの声とは違う気がした。よくわからないけど。
「マーちゃん?」
「ううん。なんでもない。早く帰ってミーちゃんちの冷蔵庫にあるプリン食べたいなーって思っただけ」
そう言うとマーちゃんは私に笑いかけると急に走り出した。
「あ、ちょっとマーちゃん待ってよ! てかそのプリン私のだからね!」
私はマーちゃんの後を急いで追いかける。
プリンは絶対渡さないんだから!
二日後。ポストにピンク色の便箋が入っていた。その便箋には切手も私の住所も相手の住所もなく、
ただ一言『ミーちゃんえミ☆』とだけ書かれていた。
「マーちゃんったらまた変なこと思いついたなー」
私はハートのシールを剥がして便箋を空ける。そこには一枚の紙が入っていた。
『引っ越す。ぴーえす、プリンは次の機会に必ずいただく』
引っ越す? マーちゃんが? んなバカな。今度会ったらまた一発叩いてやる。
私はわけのわからないその手紙をその辺に放り、読みかけの漫画を読む作業を再開する。。
気になる。漫画の内容が頭に入ってこない。なんでマーちゃんはこんな回りくどいことをしたんだ
ろう。メールでもいいのにわざわざ手紙なんて。ひょっとして本当に引っ越すのかな。いや、そんな
バカな。でももし本当だったとしたら……。
68 名前:No.17 ミーちゃんえミ☆ 2/2 ◇VXDElOORQI[] 投稿日:07/07/01(日) 23:41:07 ID:+Xl9deu1
私はいてもたってもいられなく、今度は漫画を放り投げ、上着を掴んだ。
とりあえずマーちゃんの家に行ってみよう。
ふと窓から見せた空は雲に覆われ、もやもやとした私の心と同じような色をしていた。
マーちゃんの住んでいたアパートには誰もいなかった。
チャイムを鳴らしてもマーちゃんの面倒臭そうな声は返ってこなかったし、ドアはいつも無用心な
マーちゃんちらしくなく鍵がかかっていたし、窓から覗いた部屋の中には家具がなにもなかった。
嘘。その言葉で私の頭は一杯になった。
嘘に決まってる。いつもみたいにマーちゃんのたちの悪い嘘だ。
マーちゃんの家に前で呆然と立ちつく私にポツリポツリと雨が落ちてきた。
「マーちゃんのばかぁ……」
本当に今日の天気は私の心のまんまだ。そう泣きながら思った。
入学式を私は風邪で欠席した。あのとき雨に打たれたせいだ。それにマーちゃんのいない入学式に
行く気もしなかったのでちょうどいいと思った。でも熱はあっさり次の日には引いて、私は学校に半
ば無理矢理いかされた。
マーちゃんのいないに学校に初めて行き、教室を知らない私は先生に連れられて教室へと向かった。
「ミーちゃんやっほー」
「なっ」
そこにはマーちゃんがいた。
「な、なんで」
「引っ越したんだ。近所の一軒家に。夢のマイホームゲット。ビックリした? ねえビックリした?」
「ビックリって……そんなことって……」
「ところでさー」
「……なによ」
「ミーちゃんちの冷蔵庫にプリンある? 今日の帰りに食べにいっていい?」
「ばかっ」
私は泣きながらマーちゃんの頭を叩いた。
おしまい