【 恋の呪文を唱えて、伝えるのは誰だ 】
◆ThH5IIjnMM




55 :No.54 恋の呪文を唱えて、伝えるのは誰だ ◇ThH5IIjnMM:07/06/17 22:57:05 ID:s3iEwa6p
「つまり隣に住んでる幼馴染のアケミにお前のことを好きになるようにしろってか?」
 タケシを腕組をして睨みつける魔神。ゆうに一九〇センチはあるだろう、その一般的には高身長に入る体から
見下ろされたタケシは、恐々と返事を返す。
「う、うん。なんでも願いかなえてくれるって言ったろ? 頼むよ。お願いだよ」
「バッカ!」
 魔神のビンタがタケシの頬にクリーンヒットする。タケシは「はぁん」と叫び声を上げ、錐揉みしながら床に
叩きつけられた。
「それでその娘を手に入れて嬉しいのか! 根性なし! その前に精神操作なんてサイケなこと俺はできん!」
「なんで出来ないのさ。そんな卑怯なことは出来ないって言うのかよ」
「いや、俺に精神操作する能力ないから無理なだけだが」
 タケシは数秒、ポカーンと魔神のことを眺めていたがゴホンと咳払いをして話を再開する。
「とにかく! 願いかなえるって言ったんだからちゃんとしろよな!」
「ちっ。しょうがねーな。そのアケミって娘、今も隣にいるのか?」
 魔神は親指で窓の外を指差した。窓の外には、アケミが住んでいる家が見える。
「た、多分いると思うけど」
「よしちょっと待ってろ」
 そう言うと魔神はドアに向かって歩き出した。
「魔法かけてくれるの?」
 その言葉に魔神は振り返り、グッと親指を立て、颯爽とドアを開け、縁に頭をぶつけない様に気をつけながら
外に出て行った。

「ただいま」
 出て行ったときと同じように縁に気をつけながら魔神は部屋に戻ってきた。
「そ、それで魔法はかけてくれたんだよね?」
「それがどんな魔法かけるのか忘れちゃってさ。お前は誰になにをして欲しいんだっけ?」
「だから! アケミに俺のことが好きになる魔法を使ってって言ってるの!」
「んー。あれだ。なんでアケミにそんな魔法使わないといけないんだ?」
「俺がアケミのことが好きだから決まってんだろ!」
 魔神はその言葉を聞くとニヤニヤしながらドアを開ける。ドアの向こうには一人の少女が立っていた。
「告白くらい自分の力でしなさいよ。バカ」



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