【 Let`s try! 】
◆cfUt.QSG/2




53 :No.52 Let`s try! ◇cfUt.QSG/2:07/06/17 22:44:01 ID:s3iEwa6p
「Hi! Are you Hiroto?」
 よく通る、はきはきとした明るい声。白い肌に透き通る青い瞳、金髪のポニーテール。小さい胸がさらにポイントアップ。この人がきっと、電話でマサキの言っていたホームステイの人なのだろう。
「Yes,I am.Ah...What`s your name?」
 拙い中学英語で返す。困ったら難しい事はしない方が吉だ。
「I`m Nancy.Nice to meet you.」
「Oh,Nancy!Nice to meet you,too.」
 とりあえず通じるらしい。と、うしろから軽く小突かれ、振りかえる。
「で、持ってきたのか、ヒロト」
「おうよ」
 来る前の電話で、ナンシーが世界中の珍しい食べ物に挑戦するのが好きだと聞いていた俺は、自宅の戸棚からいくつか持ち出して来ていた。
「What is it?」
「This is Natto.Natto is...So,let's try!」
 説明能力などあるはずもなく、とりあえず勧めてみる。ナンシーは興味深そうにパックを開け、鼻を近付けている。
「The way to eat Natto is...」
 どうやって食べ方を伝えようかと悩んでいた俺の横で、マサキがペラペラと説明を始めた。そういえばこいつもアメリカにホームステイ行ったんだったな。
「It`s so interesting!」
 ナンシーが歓声をあげる。そしてテーブルにつくと、早速納豆を食べ始めた。どうやら俺はネタ提供者として使われただけらしい。まあいいかと溜め息を付いた。
 その後も、カバンに詰めて来た食べ物を「Let`s try!」の呪文を唱えつつナンシーに渡していく。くさや、たらこ、まいたけ等、どれも個性的な面々だが、なんのためらいもなく口へ運ぶナンシー。
 ラストは梅干だった。嬉しそうに受け取り、口に放り込んだナンシー。が、その表情が、みるみる変わった。どうやらあのすっぱさがクリーンヒットらしい。慌てて水を渡す。
 一気に飲み干し、しばらくして落ち着いたらしいナンシーが、彼女のカバンから何かを取り出し、俺に渡した。缶詰のようだが、どこかおかしい。金属容器のはずなのに、ぱんぱんに膨らんでいる。
「Let`s try!」
 満面の笑みのナンシー。缶詰の蓋には、"シュールストレミング"と書かれていた。



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