【 そして時は止まる 】
◆xQiMei65Yg




47 :No.46 そして時は止まる ◇xQiMei65Yg:07/06/17 21:21:09 ID:s3iEwa6p
――さて、私こと長瀬春奈は思う。
自分は眼の前に佇む少年に対して、どのような感情を抱いているだろうか。
「――――ぅぁ」
思考がぐるぐる回る。
後藤晶。この文字列が私に与える印象は、背が低く大人しい少年というだけでは決してなく、それは例えば幼い頃に遊んだ記憶であったり、
二日前に一晩中カラオケで騒いだ記憶であったりするわけで。
先程から捨てられた子犬のように、期待と不安の入り混じった双眸でこちらを見てくる晶は所謂幼馴染というやつで。
小さい頃から弟、もといペットのようにポチ、ポチと呼んできた晶から愛を告げられた私は、果たしてどうすればいいのだろう――。

みーんみーんと蝉が鳴く。湿気がべたりと肌に纏わり付いて気持ちが悪い。
真っ赤な夕日が海へと逃げていくそんな中、私だけがぽつんと取り残されていた。
帰宅途中、行き成り告白して逃亡というピンポンダッシュ紛いの事をしやがった晶には、返事をした後じっくりと礼儀について教え込んでやろう。
そんな事を心に決めて、漸くショック状態から開放された私は家に向かい足を踏み出した。

さて。
ゴロニャ〜ンとベッドに転がりながら思考に耽る。
晶への答えは決まっている。
幼馴染は愛玩道具であり、決して恋人足りはしないというのが私。他の人がどうかなど知らない、知らないったら知らない。
悩むのは返答の中身であり、「好きな人がいるの」という感じで適当に虚偽を交えつつオブラートに包むか、「いや、在り得ないから」と正直に伝えるかだ。
前者は兎も角、後者を言ってしまえば今までの関係ではいられないなぁと思いつつ。
私に対しての依存を解いてやる意味ではいいのかなぁ等とも思ったりして、行ったり来たりな思考は遅々として進まない。

そんなこんなで朝。
お隣さん同士な私達はばったりと出くわしてしまい。
「やぁ、ポチ」
私はいつも通りに声を掛け。ポチは返事を期待しているのか、注意しても中々合わせようとしなかった目線を合わせてくる。
素直に関心しながらも、一晩中考え抜いた私は、ぶっつけ本番なら正直な答えが出てくるだろうという楽観的思考に意識を放り投げ、ぽんっと思いついた無難な答えというやつを投げかけた。
「下僕から始めない?」
変わらないじゃん、今までと。



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