【 治療記録 】
◆Pj925QdrfE




443 名前: ◆Pj925QdrfE :2006/04/30(日) 19:54:25.16 ID:kqJ8uZMJ0
Week.1

感覚的にはそれで合っている。まぁ、経験談から導かれた多数派の意見だから
必ずしも君がそれに当てはまっているとは限らないが。
とりあえずそのまま続けるんだ。そのうちに効果が出てくるだろう。

Week.2

うむ、傾向としては良好、といったところか。
前例が多いというのは助かるね。対策が練りやすい。
あぁ、構わないよ。来週も同じように。

Week.3

なに? 変わった兆候が出ていると? どれどれ、教えてごらん。
――あぁ、それなら気にすることはない。一部ではあるが、彼らのうちにも
同じような兆候が見られることがある。続けて結構。

Week.5

薬はちゃんと飲んでいるかい? 君の場合は回復がなかなか遅いからね……
治療の方法はこれで合っているんだから、ちゃんと続けてもらわなくっちゃ。
え? ちゃんと飲んでるって? だったら私の杞憂のようだ。すまない。


444 名前: ◆Pj925QdrfE :2006/04/30(日) 19:54:47.53 ID:kqJ8uZMJ0

Week.8

多少安定してきたけど、油断しているうちに症状が悪化する、なんてことは
本当によくあることなんだ。だからもし君自身が「回復している」と感じたとしても
私が確認するまでは毎週ここに来て欲しい。

Week.11


彼女が来ないね。


Week.12

先週はどうしたんだい? どうしても外せない用事でもあったのかな。
こっちとしても一応、しっかり経過を記録しておかなくちゃいけないんだ。
ま、君の場合は症状も安定してるけど。どちらかというと、私の問題かな。

Week.14


今週も来ないのかい? 彼女は。



445 名前: ◆Pj925QdrfE :2006/04/30(日) 19:55:44.50 ID:kqJ8uZMJ0
Week.37


もう来ないつもりかな。


Week.56

どうやら私はここを離れなくてはならないらしい。先ほどからドンドンとドアを叩く音がうるさくてね。
とりあえず彼女の治療記録はこれでひとまず「中断」ということにしておこう。
あの感覚がもう味わえなくなるのは実に惜しいことだが、仕方がない。



「――との事ですが、どう思います? 警部」
押収したカルテを右手の甲で叩きながら、若い大柄の男が言った。
「狂ってるとしか思えないな。でもまぁ、特に否認するつもりもないそうだから、あとは上に任せよう」
警部、と呼ばれた中年の男性があごひげをいじりながら答えた。
「やめられなかったんですかね」
「俺達と同じさ。結局は――」
大柄の男の腰に掛けられた無線機から、表情の無いブザー音が鳴った。
「入電です」
警部は大きくため息をついて首を左右に振った。
「……それじゃ、行こうか」



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