【 乗り物で思いついた小ネタ二つ 】
◆VXDElOORQI




504 名前:乗り物で思いついた小ネタ二つ(1/2) ◆VXDElOORQI 投稿日:2007/05/20(日) 23:45:17.29 ID:0ZfYIqMd0
「私さー、いっつもバスに乗ると思うんだけどさー」
 茶色がかった髪の毛をしたユミは窓の外を眺める風景を見ながら呟く。
「なにをー?」
 肩まで伸ばした真っ黒な髪をポニーテールにまとめているカナは特にどこを見るでもなく車内を眺
めていた。
「英語で言うとさー。自動車はカーでしょ、電車はトレイン、自転車はバイクでしょ」
「自転車はバイシクルじゃないの?」
「どっちでもいいわ。そんなの。話を遮るな。このスットコドッコイ」
 その言葉にカナはガッとユミのことを睨みつけるがユミは気にせず話を続ける。
「今乗ってるこれ、バス。バスは英語だよね? でさ、バスは日本語でなんて言うの?」
「……え?」
 ユミの質問にカナは思わず口ごもる。
「カナちゃん。知ってる?」
「…………」
「んふ。知らないんだ」
 沈黙を否定と受け取ったユミは得意そうな笑みを浮かべる。
「じゃ、じゃあミーちゃんは知ってるのー?」
 カナの反撃にユミの動きが一瞬止まる。
「し、知ってるに決まってるだろー。いいかよく見てろよ」
 ゴホンと咳払いをして、ユミは少し俯きカナを上目遣いで見つめる。
「ばぁす。はぁと」
「可愛く言ってるだけだろ」


「う、きもちわるい」
 バスから降りて家への道を歩いているといきなりユミが口を押さえてうずくまった。
 うずくまっているユミを華麗にスルーしてカナは一人で歩き続ける。
「ちょ、待ってよ。この薄情者! 売女! ドサンピン!」
 ユミは大声でそう叫ぶ。ユミの口汚い言葉にカナはすぐに踵を返す。
「ちょっと黙れ」

505 名前:乗り物で思いついた小ネタ二つ(2/2) ◆VXDElOORQI 投稿日:2007/05/20(日) 23:46:00.10 ID:0ZfYIqMd0
 カナはぐにぃっとユミの両頬つねりあげる。
「ひょんろにきもひわるひんらってば」
「ホントに?」
 頬から手を離したものの、カナは疑りの眼差しをユミに注ぐ。
 ユミは頬を擦りながらコクコクと首を何度も縦に振る。
「で、なんで気持ち悪いの?」
「……乗り物酔い」
 ユミはまた口を押さえ、うずくまる。
「いや、お前さっきバス、普通に乗ってただろ」
「い、今だって乗り物に乗ってるでしょ……」
 カナは自分の周りを見回し、最後に自分の足元を見る。
 カナもユミもなんの乗り物にも乗っていない。自分の足でコンクリートの上に立っていた。ユミは
うずくまっているが。
「いや、乗ってないけど」
「この非国民! カナちゃんも乗組員の一人だろ! 僕らの宇宙船地球号の!」
 しばらくユミのことを見つめていたカナは「はぁ」とため息を吐くと踵を返し、二度とうずくまる
ユミに振り返ることなく真っ直ぐ家へと向かった。

おしまい



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