【 クリスマスプレゼント 】
◆h97CRfGlsw




59 :No.17 クリスマスプレゼント 1-5◇h97CRfGlsw :07/02/25 01:23:42 ID:P8GIJP6V
 クリスマスというものがある。仔細は説明せずともわかっているだろうので割愛するが、つまり今日がその日だ。この私、山田絵里十歳もこの日に歳相応の期待を寄せ、高揚した気分で今朝を迎えた。
 パパとママからの心篭ったプレゼント。両親はまだ私がサンタクロースを信奉していると思っているようだが、それは欺瞞だということは既知だ。ただ、気付いていないふりはしているが。
 話は変わるが、去年のプレゼントは大きなクマのぬいぐるみだった。キョンと名付けられたそれは今、私の隣で寝ている。そっと撫でてやると、ふかふかの肌触りが心地よい。愛い奴だ。
 さて。今年のプレゼントは一体なんだろうか。目は既に覚めているが、毛布に包まったままもじもじとプレゼントに思いをはせる。この焦らしがたまらないというものだ。
 靴下には、新しいぬいぐるみを所望する旨を記しておいた手紙を入れてある。仮に願いが聞き入れられているとすれば、はて。涼宮と名付けるつもりのそれは、一体なんになるだろうか。
 出来ればウサギがいい。耳が好きなのだ、あの長い耳が。本心を言えばバニーガールのウサ耳が欲しかったのだが、そんな事を言っては両親が卒倒してしまうというもの。
 よし。もぞもぞと毛布を蹴って、私の体には少し大きすぎる天蓋付きベッドから抜け出す。きょろきょろとあたりを見渡すと、あった。勉強机の上に、赤の包装紙で包まれたプレゼントがある。
 なんだろうか。妙に長い。目算で、大体一メートル以上あるだろうか。包装紙の上から触れると、ふわりとした感触があった。推測するに蛇か、はたまたそれに準ずる何かか。
 まあ、悪くない。いい抱き枕になってくれることだろう。丁寧にセロハンテープを外し、包装紙をたたんで脇に退ける。中身はやはり、蛇だった。緑に白い斑点の体に、可愛らしい顔をしている。
 胸にそれを抱いて、ベッドに身を投げる。しっかりと腕で羽交い絞めにし、股にはさんで顔を埋める。うむ、よきかなよきかな。
 と思いきや、ごつりと何か硬い感触が頭にあった。蛇の口に、何かが入っている。不信に思い手を突っ込むと、棒状のものが手に触れた。衣の感触もある。はて、と体を離し、勢いをつけて引き抜いてみる。
 しゃいんと、痺びれるような鞘走りの音と共に、目の醒めるような光沢を放つものが蛇の口からぬるりと現われた。
 そう、それはまさしく、紛れもなく、見違うこともなく、どう考えても、誰が見ても、私が見ても、間違いなく、
 
 刀だった。

60 :No.17 クリスマスプレゼント 2-5◇h97CRfGlsw:07/02/25 01:24:44 ID:P8GIJP6V
 刀身は約三尺。流麗な反りを持ったそれは、まさしく日本刀。中でもこれはおそらく野太刀と呼称されるもので、日本の刀剣類の中では比較的長大な代物だ。
 なんてことは、どうでもいい。問題なのは、これが今この瞬間私と一緒にベッドの上に存在するということ。そして、私の両親の精神構造を疑わざるを得ない状況に陥っているということだ。
 何故。眉をひそめて刀を見つめる私の頭の中で、疑問符が一同に集結して会合を開始した。キョンがベッドの隅で、鞘を抜かれて軟体動物に戻った涼宮にまきつかれて迷惑そうな顔をしていた。
 
 まずは、冷静に状況を分析しようじゃないか。今私の目の前には、日本刀が一振り。銘がないかと探してみたが見当たらず、蛇の内部にもこれ以外には何も見つからなかった。
 拍子抜けだが、イレギュラーなものはこの日本刀だけで、私の部屋の内部など、他の環境は昨晩の就寝以前となんら変わりない。
 ううむ、と図らずも頭を抱える。意味がわからない。朝起きたらプレゼントと一緒に日本刀があったときくらい意味がわからない。つまりは何もかも意味不明で、わからないのだ、意味が。
 まずい。あまりに不可思議な出来事で、頭が混乱を極めているようだ。言動が支離滅裂だぞ、山田絵里十歳よ。平常心を忘れるな。
 そう、まずは落ち着け、落ち着くのだ山田絵里十歳。そろそろ六年生なのに背も低いし、貧相な体つきなのがコンプレックスの山田絵里十歳。大丈夫、まだ成長期だから。
 は。その時不意に、私の脳髄に電流が走った。そうか、パパとママはその事を知っていて、だからこそこの日本刀をプレゼントしてくれたのではないか。この刀を素振ることによって、胸筋を鍛えろと。そういうことか。
 ふと、キョンの方に目をやる。クマのぬいぐるみはそんなわけがないだろう、と言いた気な目でこちらを見ていた。うん、私もそう思う。というか余計なお世話だというに。
 でもそれなら、やはり何故だろうか。愛娘に日本刀をプレゼントする意味とは。考えれば考えるほど、理解から離れていく気がする。
 そもそも日本刀である必要はあるのだろうか。ナイフでは、ソードではダメだったのだろうか。危険物という点においてこれを選んだのならば、銃器でもよかったはずだ。
 個人的な話だが、くれるのなら銃がよかった。刀は重いし、なによりダサい。銃、大なり刀という不等式は、私の中ではもはや主義と化している。のだが、悲しいかな友人はことごとくこれに背く。日本刀こそ至高と。
 日本人だから、日本の伝統である刀に良方向への補正がかかっているのではないだろうか。刀なんかでズバズバやるよりも、銃で撃ったほうがスタイリッシュで格好いいというものだ。
 は。その時再び、びしりと私の脳幹にスパークが巻き起こった。まさか父は、この売国奴然とした主義趣向をもった私の心を、この日本刀の美麗さをもって強制しようという魂胆なのではないだろうか。
 だがそんなことをわざわざ私にする前に、即刻朝日新聞との契約を破棄し、ヨン様とかいう気持ち悪い筋肉眼鏡に散財する脳の足りないママを斬り殺すべきだ。
 以上の要素から、推論は棄却される。いい線だと思ったのだが、ふむ。ならばやはり、蛇という点になにか関係があるのではないだろうか。蛇の口に、刀を突っ込んでおく意味。口に突っ込む。突っ込む。
 いや、わかっている。私が今なにを想像したのかは、私が一番よくわかっているんだ。みなまで言わずともよい、山田絵里十歳。思わず股に日本刀を敷きそうになった自分が憎い。
 若気の至りという点で、再び推論は却下された。というかそういう目的なら、おあつらえ向きのものがパパの机の引き出しにたくさんあっただろうに。私は知っているのだぞ。
 ふう、と思わず嘆息する。私は一体、クリスマスの朝になにをやっているのだろうか。

61 :No.17 クリスマスプレゼント 3-5◇h97CRfGlsw:07/02/25 01:25:31 ID:P8GIJP6V
 壁にかけてある時計に目をやると、じき七時を迎えようかというところだった。リビングへ行って、パパにおはようのキスをしなければならない時間だ。
 パパは私が約束を守られなかった場合、部屋に突貫して寝込みにキスも辞せぬという構えなので、早々に部屋を出る為に洋服ダンスへと向った。適当な組み合わせをこしらえ、いそいそとパジャマを脱ぐ。
 ボタンを外しながら思う。何度考えても、件の日本刀の意図がわからない。あまりの意味不明瞭さに、だんだんと困惑より怒りが込み上げてきてしまう。理解できないことは嫌いなのだ。
 は。その時偶然にも、思い出したことがあった。もしかしてこれは、元服という武士の慣例にのっとったものなのではないか。パパとママは私に、一人前になるようにとこれをプレゼントしたのでは。
 って私まだ十歳だし、仮にそうだとしても、現物の日本刀を渡す馬鹿野郎が一体何処にいるというのだ。リビングか。
 はあ、と溜め息をつく。苛々していても仕方がないではないか、山田絵里十歳よ。そうね、苛々していても仕方がないわ、山田絵里十歳さん。脳内会議もお手の物だ。
 せっかくなので、前向きに考えることする。タンスの奥からベルトを取り出して腰に巻き、刀を差し込んで帯刀してみた。姿鏡の前で抜刀し、ポーズを構えてみる。ううむ、フリルのロングスカートに刀は合わない。
 ものは試しと、何度か素振りをしてみる。ひゅんひゅんという風切り音が耳に心地よい。まるで何年も聞いているママの声のように、違和感なく耳になじむ。うう、ちょっと刀になびいてしまいそうだ。
 は。その時再度、私のニューロンに電流が走った。まさかこの刀、俗に言うインテリジェンスソードという奴ではないのだろうか。果たして私は、知性剣に選ばれた戦士というところか。
 で、なにと戦えばいいのだ。苛々の原因でも切り捨てればいいのか。ふとベッドに目を向けると、蛇にまきつかれたインテリジェンスクマのぬいぐるみが、お前はなにを言っているんだと言いた気な表情をしていた。わかってる、自覚はあるんだ。
 ふう、と息を吐く。それにしても、この刀は重い。目測でも一、二キロ程度はゆうにあるだろう。我ながら情けないが、ひ弱な私には少し荷が勝ちすぎる。まさかパパとママはこれを見越して、ってもういいわ。
 帯刀したまま部屋を出て、リビングへと向う。両親はどういう反応を見せるのだろうか。驚くのか、それとも。
 リビングにはママがいた。鼻歌を歌いながら朝食の準備をしている。おはようございますと声をかけると、振り返って微笑んでくれた。おはようと返しながら、頭を撫でてくれるママ。至福だ。
 格好いい刀ね、よかったわね、とママ。うん、サンタさんがね、くれたのです。蛇のぬいぐるみの中に入ってて、もう驚いたのなんの。
 って、刀についての突っ込みはなしですか。娘が刀狩令と廃刀令と銃刀法にと、一度に三つも違反を犯しているというのにスルーですかママン。台所に向き直ると、ママはそのままサラダの製作に戻った。
 あうあう。どういうことだ。私はてっきり、ママが怒り狂ってパパの部屋に突貫するものと思っていたが。寧ろおかしいのは私なのか。クリスマスプレゼントに日本刀。かくも一般常識か。
 いや待て、私の脳まで侵食汚染されてどうする。これは異常事態だ。大丈夫、私は間違っていない、はずだ。うう、だんだん自信がなくなってきた。
 手持ち無沙汰なので椅子に座り、足をぶらぶらとさせて朝食を待っているとパパが起きてきた。駆け寄って背伸びをすると、頬にキスが降りてくる。同じように、かがんだパパにキスをする。
 いい日本刀だね。パパが言う。うん、そうなのです。サンタさんがくれたんだよ。蛇のね、ぬいぐるみの中に隠してあったのですよ。
 っておい。っておい。お前もスルーか。あくまで日本刀は、生活の一部分として扱うということか。現代の日本刀なんて、非日常の最たる例じゃないか。どういうことだ。お前の頭にはプリンでも詰まってるのか。
 ここまで来ると、自分の意識が正常なのか怪しくなってきた。いや、私は正しい。私こそ常識。私こそルール。しかし、私がおかしいと思うものに反応を見せない両親。薄ら寒いものを感じる。

62 :No.17 クリスマスプレゼント 4-5◇h97CRfGlsw:07/02/25 01:26:00 ID:P8GIJP6V
 いっそのこと問いただしてみようか。おいお前ら、この日本刀をどういうつもりで蛇の中にぶち込んどいたんだ。内容によっちゃあこの日本刀、長門が真っ赤に染まることになるぜ。HAHAHA。
 聞けない。聞けるわけがない。私にフリルまみれの服を着せ、天蓋つきベッドで寝かせ、毎朝キスをさせるような親に。不思議の国の山田絵里十歳。夢見る少女設定を、私につけている親に。
 頭を抱えてうなだれる。親の期待を裏切ってしまうわけにはいかない。いるの。サンタはいるのよ山田絵里十歳。信じるものは救われます。イエス、ユア、ハイネス。
 やがて朝食が始まった。大きなダイニングテーブルにママと向かい合って座り、目の前の大きなバスケットからスコーンを取って食べる。うん、イチゴジャムがおいしい。
 ちなみにこれまでの間、私の腰には当然長物が提げられていた。私が客観的な立場にいたら、はりせん持って突っ込んで全員をたこ殴りにするであろう程シュールな光景だ。
 何故突っ込まない。何故おかしいと一言言ってくれない。クリスマスプレゼントに日本刀を貰いました。パパとママはそれを見て、いい日本刀だねと言ってくれました。嬉しかったです。
 ってどんな馬鹿だよ。学校でそんな発表したら一発で電波人間確定、以降の立ち位置は腫れ物となります。ご了承下さい。ちなみに当方は日本刀との関連を断固否定します。
 そういう魂胆か両親よ。私が冬休み明けにする、タバタさんとヨシオ君とのプレゼント談義で爆弾発言をしろと。日本刀貰ったの。うわ、いいなあ。羨ましいわ。いいでしょう、素敵でしょう。
 ってそんな会話になるわけないだろう。和気藹々な空間を作るファクターとして、日本刀は致命的に不適格です。今回はご縁がなかったということで。帰れよ。
 ちなみにここまでの思考に二秒。スコーンが美味しい。ブルーベリージャムも隠し味のワインが利いていて、柔らかな甘味とかすかな酸味が、口内で素敵なハーモニーを奏でている。頭の中も合掌状態だ。
 パパとママが何かを話している。どうやら今夜の夕食はどうするか、という計画を立てているようだ。それよりこちらに目を向けてください。愛よりも、あなた方の突っ込みが欲しい山田絵里十歳がいます。
 ぷつり、と何かが切れた音がした。それは私の脳の血管か、もしくは正気をつなぎとめていた糸か。どちらでもいい。言うぞ、もう我慢の限界だ。私は勢いに任せて、とうとう口に出した。
 あの、何故サンタさんは、プレゼントに日本刀をくれたのでしょう。
 言えない。それでも、サンタの存在を否定する発言など出来なかった。きょとんとした表情で私を見つめるパパとママ。見るな。そんな目で、私を見るなよ。抜剣するぞ。
 いい子にしていたからじゃないかな。パパが笑顔を浮かべて言う。きっとそうね、とママが続けた。なあんだ、そうだったのか。いい子にしていたから、サンタさんは日本刀をくれたのか。
 いや、なんでいい子に殺傷兵器をプレゼントするんだよ。日頃の鬱憤を晴らせという事か。いいのか晴らしても。血を見ることになるぞ。主にサンタの。
 大声で突っ込みを入れたくてプルプルしている私を知ってか知らずか、両親は私のいいところを列挙し始めた。お世辞より突っ込みをくれ、頼むから。ていうか胸が小さいって、欠点だろ馬鹿オヤジが。
 おっと待て。なんて言葉を使っているのだ、私は。いくら脳内だからといって、二人を相手に殺陣のイメージを膨らませるなど、あってはならないことだ。だから背が低いは欠点だって言ってんだろ糞ババアが。
 ダメだ、もう限界だ。苛々が限界突破し、私の攻撃力はもはや一万を超えた。今ならどんなウェポンだって倒せそうな気がする。今度こそ、言いたかった言葉を口にする。
 プレゼントに日本刀って、どういうつもりですか、パパママ。

63 :No.17 クリスマスプレゼント 5-5◇h97CRfGlsw:07/02/25 01:26:44 ID:P8GIJP6V
 言ってしまった。後悔よりも爽快感の方を強く感じる私は、悪い娘です。ですがもう、限界でした。これ以上のブラフは反感を買い、娘である私に切り殺されてしまう一歩手前だったのですよ。
 私の言葉に、両親は固まっていた。二人は同じように、定食屋でゴキブリを見た瞬間のような顔をしている。私ゴキブリ。ゴキブリ私。ごめんね両親。責任とって切腹します。ああまさかこのために、ってもういい。
 長すぎて一息には抜けない刀を手間をかけて抜き、床に座り込んで切っ先を腹部に向ける。長すぎて腕を目一杯伸ばさないと、そのまま突き刺してしまいそうだ。プルプルしている私を、パパが慌てて止めた。 
 そんなことしたら危ないでしょう、ってアンタの冗談のほうが危ないわ。娘の気質も把握しないでこんなものよこしおってからに。慌てた表情のパパに更に詰め寄る。
 私もう、サンタクロースがいないってこと、知ってます。だからこれはパパからのプレゼントでしょう。何故こんなものを。どうして。
 まくし立てる私の頭に、パパはぽんと手を乗せた。絵里、きみ知ってたのか。そう言いつつパパは、あろう事かクスリと笑った。ママも背後で笑っているのがわかる。
 もう絵里も子供じゃないんだからな、サンタさんがいないってことを知らなきゃと思って。日本刀は悪戯さ。いやあ、面白かった。絵里、ずっと困った顔してるんだもの。いつママがいつ噴き出すか、ひやひやしてたよ。
 ごめんなさいね、とママが後ろから言葉を続ける。悪戯。悪戯て。そうだよ、悪戯。何故こんな単純で頭の悪い理由を、私は真っ先に思いつかなかったのだ。くそう。
 うぐう。私は急に、真面目に日本刀の意図を考察していた自分が恥ずかしくなって、頭を抱えて床に座り込んだ。馬鹿は私でした。真の馬鹿は私でした。そうだよ、別に日本刀に意味なんかなかったんだよ。
 うう。だんだん腹が立ってきた。何故こんな仕打ちを受けねばならないのか。今の今まで、サンタはいるとかいう馬鹿丸出しの発言を強要しておいて、これか。おのれ、許さん。粛清してくれる。
 私がふつふつと憤怒に身を焦がしていると、パパが部屋を出て行った。戻ってくると、パパは胸に大きな袋を抱えていた。赤い袋だ。きょとんとする私に、パパはそれを差し出した。
 ウサギのぬいぐるみだった。可愛らしい長い耳をもったウサギのぬいぐるみが、中には入っていた。パパは微笑んでいる。まさか。パパはちゃんと、私がなにを欲しがっているのか知っていたというのか。
 私は苦笑した。これでは、怒るに怒れないではないか。破顔してウサギを抱きしめると、上から包むようにママが私を抱いてくれた。柔らかい感触にそっと目を瞑る。
 私は確かに、この二人に愛されている。そう改めて思った。嬉しくも恥ずかしくもあり、少しだけこんなやりかたはずるい、と思った。
 私はママから離れて、傍らにおいてあった日本刀に手をやった。愛すべき、馬鹿な両親だ。はじめは驚いたけれど、この刀も今の精神状態で見れば、愛着も湧くというものだ。
 パパとママを振り返り、ありがとうと頭を下げる。推測に過ぎないが、きっとパパとママは自分たちの贈り物で、私がサンタに感謝をするのが嫌だったのだろう。照れ隠しのブラフ。愛い連中だ。
 二人にキスをする。私は山田絵里十歳。山田家の愛娘。愛しい両親との生活は、とても幸せなものです。


 そして私は幸せな気分に浸りつつ、居合抜きの要領でウサギの耳の付け根辺りを斬り飛ばした。唖然とする馬鹿供を尻目に、それを頭に乗っけて部屋へと戻った。
 欲しいものが手に入った。この日本刀は決して、無意味なものではなかったということだ。                         
                                       
  幕



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