【 ボクの動物園デビュー 】
◆dx10HbTEQg




406 名前:ボクの動物園デビュー(1/1) ◆dx10HbTEQg 投稿日:2006/12/02(土) 00:41:09.73 ID:kXS3p6ZO0
 まだかなあ。
 待ちくたびれて、ボクはうとうとしていた。昨日は今日が楽しみで楽しみで、なかなか眠れなかったんだ。
 あーあ。寝ちゃおうかなあ。ママの背中はあったかくてすごく気持ちいい。
 ぼんやりとしていたら、わあ、といきなり周りが騒がしくなった。ボクは思わず飛び起きて、きょろきょろと見渡した。
「なに? なに? どうしたの?」
「時間よ、ほら」
 時間!
 いつのまにかお日様はボクの真上にあった。しまった。一番乗りで見るつもりだったのに。
 慌ててママから離れて、広いところまで走る。ママが止める声なんて無視だ。
「うわあ!」
 いっぱいの動物がボクの目に飛び込んだ。色も大きさも模様もみんなばらばらで、すごく面白い!
 鉄の棒が何本も立っていて、その向こう側からみんなが覗いてる。
 ママやパパから聞いてはいたけれど、思っていた以上にすごい!
「すごい、ねえ、すごいよママ! パパ!」
「そうねえ、すごいわねえ」
 ママはちょっとどうでもよさそうで、パパは返事もしてくれなかった。パパはあんまりここが好きじゃないみたいだ。
 でもそんな冷たい反応もボクは気にならなかった。たくさんの動物を見ることに必死で、それどころじゃない。
 ぶー。もっと近くで見たいよ。あの生き物たちとお友達になりたいな。なのに、この棒が邪魔だ。
「あっちに行っちゃいけないの?」
 後ろでのんびりとしていたママに聞いた。どうして向こうに入れてくれないんだろう?
 触ってみたいのになあ。あっちはフワフワしてそうだ。こっちはツルツル。あ、そっちのは干からびてるようにしか見えないや。
「ダメよ、危ないわ」
 ……危ないのかあ。つまんないの。今ボクの目の前にいる動物は大丈夫そうだけど……。小さくて、すごく可愛い。
 手を伸ばそうとしたら、ママに怖い顔をして止められた。ちぇー。向こうもなんだか残念そうだ。
 本当に危ないかなんて、近づいてみなきゃ分かんないよ。ボクの知らないところで勝手にダメって決めないで欲しいなあ。
「ねえ、ママ。これ、なんていう動物だっけ?」
 ボクの質問に、ママはまだ覚えられないの? と笑って教えてくれた。
「ヒトよ」
 ふーん。ヒトって動物は、檻で離しておかなきゃならないくらいに危ないんだね。忘れないようにしなきゃ。



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