【 オトギリソウ 】
◆hqr855lGDg




15 :NO.04 オトギリソウ (1/2) ◇hqr855lGDg :06/11/05 17:22:43 ID:NrvaQBzG
私には妻と高校生の娘がいた。しかし妻は七年前に病死し娘も二年前に交通事故で死んだ。
今日は娘を殺した松永にいよいよ判決が下る。思えば長い二年だった、私はこの二年ですごく年老いた。それも全てこの松永のせいだ。私は松永が許せない、彼は酒気帯び運転の末に娘を殺したにもかかわらず娘が飛び出してきたと嘘までついて罪を軽くしようとしているのだ。
物思いにふけっていた私の耳に裁判官の槌の音が響き渡る。判決は……懲役五年。この事件が業務上過失致死で最高でも懲役五年なのは分かってはいた。でも、悔しかった……ただ悔しかった。


16 :NO.04 オトギリソウ (2/2完) ◇hqr855lGDg :06/11/05 17:22:59 ID:NrvaQBzG
――判決が下った次の日、私は娘の部屋の整理をしていた。自分の中でももう決着をつけよう、そんな気持ちだった。
娘の部屋には和菓子のアイディア帳があった。私の後を継いで和菓子職人になると言っていたのを思い出した。なんて不条理な世の中なのだろう。未来ある娘を意図的ではないにしろ殺した男がたったの懲役五年なのだ。
ずっとそのノートを見ていた私はふと「父へ」という文字を見つけた。最後のページ、下には何か黄色い小さな花が書かれている。何の花だろうか?私は階下に降りて花の図鑑を見た。
『オトギリソウ』
横にはこう書いてあった
『花言葉:恨み,秘密』
娘は知っていたのだ私の秘密を、だから自殺したのだろう。
私は厨房で娘のデザイン通りにオトギリソウの和菓子を作った、たっぷりの毒を練りこんで。
「もう疲れたよ」
ああまでして手に入れた娘が自分のせいで死ぬなんて……
私は和菓子を口に運ぶ。

夫婦で同じ毒で逝くとはな……私は薄れゆく意識の中で嘲笑した。
娘のデザイン画に花言葉のような意味はなく、ただ父親に見て欲しかっただけだったなど知る由もない

オトギリソウには『迷信』という花言葉もある



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