王の資質
ID:P9cLTgbi0




293 名前:品評会出品作:王の資質 :2006/09/10(日) 03:16:55.89 ID:P9cLTgbi0
「王足る者の使命、それは何だと思うかね。」
 ここはある変人の講義室、生徒の質問が発端で、随分と内容が脱線し、今に至る。
「それは・・・やはり国を統治することです。」
 指された生徒は、無難で簡潔で漠然とした答えを返す。
「そう!王とは統治が可能だから王なのであり、その権限が与えられているからこそ王なのだ。」
 答えた生徒は、なぜ教授のテンションが上がっているのか分からないが、肯定されたようなので気分がよかった。
「だが統治の仕方にも色々ある、この国は王政ではなくなったが、そのことにより統治能力という面で見れば、逆に低下しているともいえる。」
 なんとも不用意な発言をする。
「では先生は王政のほうが良かったと仰るんですか。」
 これまた不用意な発言だ。
「ある意味ではそうだ。だが先王は間違いようもなく愚者だった。王政の問題はここにある。
 王というものは必ず賢くなくてはならない。その必要は権力に比例、あるいは2次関数的にある。」
 教授は王室の関係者だった。その人が言うのだから間違いはないのだろう。
「だがどうだろう、仮に常に賢いものが王に就けるとすれば、それは正に理想的な統治体制だ。」
 やはり不用意だ・・・。
「しかし先生、そんなことできますかね。」
 合いの手を入れる傍聴者が居るのはなんとも幸運なことだ。
「確かにそれは難しい、たとえば長子相続などでそれを達成するのは無理だろう。
 だが長子相続にも一定のメリットはある。後継者が定まらないことによる権力闘争や、世情の混乱を避けることができる。
 これは差し当たっての外圧がなく、王の権力が比較的低い場合などに有効だろう。」
 王政が潰れた主原因は外圧だったと思う。
「ではどうするか、能力あるものを選抜して王位に就かせるしかない。
 だがこれはどういった手法で王を選ぶかが最大の問題になる。
 本当に能力あるものを選び出せたとしても、周囲が納得しなければならない。
 周囲が納得しても、実際の能力が伴わなければ何の意味もない。」
 問いを出さなくなってきたな教授。
「すなわちこの命題を解いてしまうことこそ我々にとって必要なことなのだ。」
 これではいつ担がれるか分からないな。王が生まれることは不幸なことなのに。

<終>




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