【 壺(仮) 】
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539 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2006/03/32(土) 20:19:14.60 ID:ZoFt+T7P0
子供の頃から500円玉が好きだった。
子供達は金銭を手に入れると菓子の類を買っていた。
僕はいつもそれを冷ややかな目で見ていた。あんな甘ったるい物の何がいいのだろう。僕は大嫌いだ。
1000円札を貰うとわざわざ500円玉2枚に両替したりもした。
父も母から100円や50円は貰えなかったけれど、500円玉だけは例外だった。
僕が500円玉が何よりも好きな事を知っていたのだ。そんな時僕は両親をとても愛おしく感じる。
子供の頃からずっと、僕の財布にはいつも数枚の500円玉が入っている。
大人になってからは500円玉専用の壺も買った。今では十数はあるだろう。
知らぬ間にいつの間にか友人と呼べるものはいなくなっていた。たまに知人を連れて来ると、皆怪訝な顔をした。
彼らは500円玉が嫌いらしい。
不思議でならない。僕はそんな人達を決まって引き止めた。彼らは一様に必死な顔をして帰りたがる。僕はそんな姿を見ると何故か可笑しくなり、帰す気のないふりをする。
少しだけ残念な気になる。何故この素晴らしさが判らないのだろうか。
光沢、触感、大きさ、どれをとっても素晴らしいではないか。
瞬間、僕は名案を思いついた。何故10年もの間実行しなかったのだろう。今考えると不思議でならない。
時間が掛かりそうなので、早速作業に取り掛かろうと思う。この結果を突きつければ、彼らも僕を見直すだろう。崇めるだろう。
つまり、数えるのである。10数年もの間収集し続けた500円玉を。
まずは壺を全て一箇所に集め、その後計数機を探そう。家中にある壺を集め、嬉々として中身を見た。
―おかしい―
500円がない。あれだけ集めたのに。壺の中は砂糖だらけだ。
……はっとして、家中が黒いもので埋め尽くされていることに気付いた時、僕はやっと騙されていたことが判った。
それと同時に僕が嫌いな糖分の匂いが漂ってきて、僕は気を失った。



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