【 1を掛けても 】
◆6F74IPNEuU




489 名前:1を掛けても ◆6F74IPNEuU 投稿日:2006/03/32(土) 12:58:02.36 FxVbYuRJ0
一年前から1円玉を毎日貯金箱に入れ、小さな毎日貯金を始めた。
アルミで出来た1円玉が軽い音を立てながら貯金箱に溜まっていく姿は僅かだが快感を伴い、
3ヶ月経った頃にはそれまでの貯金箱より一回り大きい貯金箱に変えた。
この頃から自分で決めた一日1枚を守らなくなった。
ただ溜まっていく姿が楽しくて一日に二枚も三枚も入れ、買い食いをして1円玉が余った日は
その全てを貯金箱に入れていた。
一度10円玉を入れてみたが白い硬貨の中に茶色い10円玉が混じる姿は美しくない。
統一された美しさを崩された気がして、私はすぐに10円玉を財布に戻した。
1円を手にれては溜め、手に入れては溜める日々を過ごし続けて今日が一年。
私の中で一つの区切りが見え、この中にどれだけのお金が溜まったのかふと気になった。
1枚1グラムほどの硬貨は量が量なだけあって重量があり、私の期待を高める。
風呂で数を数えるように間延びした声でいーち、にーいと一枚一枚貯金箱から取り出し、
それを2時間ほど続けた頃、ようやく終わりが見えてきた。
「よんひゃくきゅうじゅうきゅう、ごひゃ・・・く?」
合計500円。一年も掛けて、たったの500円ぽっちの貯金だった。
この500枚の1円玉は一枚の500円玉と同じ価値なのかと思うと、私は脱力するしかなかった。





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