【 ていでんのひととき 】
◆VXDElOORQI




558 名前:ていでんのひととき ◆VXDElOORQI :2006/08/06(日) 23:48:52.64 ID:5K0GaPGk0
俺と妹が部屋でテレビを見ていると、外から激しい雨音とゴロゴロという音が聞こえてきた。
「雷、鳴ってるね」
「そうだな」
「停電したら嫌だね」
「このあとの番組見たいからな」
その直後、ゴゴーンという大きな音と共に部屋は暗闇に包まれた。
「したね。停電」
「したな。停電」
「懐中電灯とかロウソクってあったっけ?」
「ない」
「直るまで真っ暗だね」
「真っ暗だな」
「することないね」
「そうだな」
俺と妹の間には特に会話が生まれるわけでもなく暗闇の中時間だけがただ流れる。その時間は妹の意外な言葉で終わりを告げた。
「お兄ちゃん」
「なんだ」
「キスしたことある?」
「ない。お前は?」
「ないよ」
「そうか」
「してみよっか?」
「キス?」
「うん」
「わかった」
俺が妹に顔を寄せ、唇と唇を合わせようとした瞬間、部屋は明るさを取り戻した。それと同時に唇と唇の距離も離れた。
「電気ついたね」
「ついたな」
「テレビ見よっか」
「そうだな」



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