【 とつぜんの♪ぜつえんせんげん☆ 】
◆VXDElOORQI




774 名前: ◆VXDElOORQI 投稿日:2006/07/30(日) 23:54:47.42 ID:xXdUwuU10
『とつぜんの♪ぜつえんせんげん☆』

「お兄ちゃん!」
妹がドアを吹き飛ばしそうな勢いで入ってきた。
学校から帰ってきたばかりなのだろう。背中にはランドセルを背負ったままだ。
怒っているのか妹の顔はいつもとは違い険しいものになっている。
「ど、どうした」
「どうして! どうしてお兄ちゃんはあたしのお兄ちゃんに生まれてきたのよ!」
…………
妹の言葉を理解するのには数秒の時間を要した。それくらい妹の言葉は理解不能だった。
「いや、どうしてと言われても……。俺がお前より先に生まれてきたからかな」
「だから、どうしてあたしより先に生まれてきたのよ!」
「そんなこと言われても」
それは俺がどうにかできる問題ではないからどうにもならん。
「もういい! お兄ちゃんのバカー!」
そう言って、妹は入ってきた勢いをそのままに部屋から出て行った。

俺が部屋でぐうたらな時間を満喫していると、またも妹がものすごい勢いでやってきた。
「お兄ちゃん!」
またこのパターンか。
「今度はなんだ?」
「あたしはお兄ちゃんとの兄妹の縁を切らせていただきます!」
またも理解不能なことをいう妹。
だけど、一体どういうことだ。昨日までは『お兄ちゃん、お兄ちゃん』と言って俺に纏わりついていた妹

がそんなことを言うなんて。反抗期か。
「どうして兄妹の縁を切りたいんだ?」
「どうしても! だからこれに名前書いて!」
そう言って妹が取り出したのは一枚の紙。

775 名前: ◆VXDElOORQI 投稿日:2006/07/30(日) 23:55:14.10 ID:xXdUwuU10
その紙を見た俺は動揺を隠せない。
「……妹よ」
「なによ」
妹は自信満々と言った態度で胸を反らせ、俺の前に立っている。
「離婚届じゃ兄妹の縁は切れないぞ」
「……え?」
さっきまでの自信満々な態度から一変して、今度はあきらかに動揺している。
「そ、そんなことないもん! だってテレビでこれに名前書けば家族じゃなくなるって言ってたもん!」
天然なのか、世間知らずなのか、どっちにしてもすごい勘違いだな。もう六年生になったんだから、それくらい知っててほしいもんだ。
「それは結婚してる人が結婚をやめるために使うもので、兄妹の縁は切れないの。わかる?」
「うー、じゃあどうすればいいの!」
そんなことを縁を切ろうとしている本人聞くなよ。
「それより、どうして縁を切ろうなんていうんだよ。俺のこと嫌いになったのか?」
「違うもん! お兄ちゃんのこと嫌いになんかならないもん!」
「じゃあどうしてだよ」
嫌いになったわけじゃないのになんで、あんなこと言い出したんだ。
「そ、それは……」
妹は顔を真っ赤にして黙ってしまった。
「黙ってちゃわからないだろ?」
「もういい! お兄ちゃんのバカー!」
妹はそう言うと部屋を飛び出していった。ワンパターンなやつめ。

776 名前: ◆VXDElOORQI 投稿日:2006/07/30(日) 23:55:44.23 ID:xXdUwuU10
次の日になっても妹は部屋に閉じこもったままだ。
気に入らないことがあるといつもこうなのだが、次の日になっても出てこないのは珍しい。
いったい、昨日のあれはなんだったんだ。
『ピンポーン』
玄関から呼び鈴の音がする。こんなときに誰だ。まったく。
「こんにちは、お兄様」
玄関の外にいたのは、妹の友達だった。
どこかのお嬢様らしく、礼儀作法もしっかりしてるんだが、お兄様には未だに慣れないな
そういえば今日、遊びに行くって言ってたな。
「わざわざ来てくれたのにごめんね。妹また部屋に閉じこもっちゃってさ」
「今日もですか? 今日はなにが原因なんですか?」
この子は妹と仲が良くてたまに家に遊びに来る
だから妹がなにかあると部屋に閉じこもってしまうことを知っている。
「昨日、いきなり兄妹の縁を切るなんていいだしてさ。それでちょっとね」
「えっ」
その子はそれを聞いて、驚いたようだ。
「なにか知ってるの?」
「ごめんなさい。多分それ私のせいです」
その子はフフッと笑ってそう言った
「どういうことかな? 教えてくれる?」
「昨日、兄妹では法律上結婚出来ないって教えて差し上げたんです」
「え?」





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