【 ねこ 】
◆yzmb2eMBHA




ねこ


気がついたら中学校の校庭にいた。
いつからいたのか分からない。時間を確認しようとしたが、どこにも時計がない。
後者についている時計も止まっていた。五時三十分。
朝日なのか夕陽なのかも判断できない。
何故か校舎内に入ろうと思った。
いつもより移動スピードが遅い感じがする。
なんとか扉に手をかけた。鍵が掛かっていない。進入。
中には人のいる気配はなかった。
下駄箱を通り過ぎて階段を上ろうとしたところで足音がした。
靴の良く響く音ではなく、野球のスパイクで歩いている様な音だった。
気配なんて当てにならないな、と思いつつ隠れようとしたところで、自分の勘は外れていなかったことを知る。
目の前に人はいない。
「不法侵入は犯罪だよ」
声がする。
長い茶色の毛並みが見える。
犬。
犬がいること自体おかしいのだが、間抜けにもその時人に見つかっていない事に安堵した。
直後に生物学的矛盾を感じる。
「そう、犬が喋っているよ」
犬が喋っている。
「先を越された」
先を越された。
あれ?考えて
「考えていることが先に言われる」
…に言われる。何で?
「すぐに気付くよ」


112 : ◆yzmb2eMBHA :2006/05/15(月) 05:39:54.96 ID:zwh9ardQ0
犬が喋った刹那、重いものが落ちたような音がした。
何というか、頭に響いた。
目を開く。
そこには知らない犬ではなく、見知った人間がいた。
「あ、起きた」
名前はわからない。
そういえば自分の名前も。
「あー、かわいいねえ」
布団で寝ている感触がしている。
「でも良く寝るねえ」
もう一人の女が答える。
「まあ寝る子は育つって言うから」
「あはは、寝子だね」
「小動物みたいに言わないでよ」
頭の悪そうな会話をしている。
何か言おうと思っても上手く声が出ない。
「あー、泣いてるよー」
「なんだろう」
低脳人どもを見上げながら、馬鹿なくせにでかい体をしているな、と思った。

-了-



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